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「今年は特にレベルが高かった」春高バレーで『ハイキュー!!』世代の高校生が見せた2つの“アップデート”と“大人たちの課題”とは?
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byAFLO SPORT
posted2022/01/11 06:00
初出場の日南振徳高校でエースを務めた甲斐優斗。2mの高さを武器に、巧みにスパイクを打ち分けた
だからこそ、高校生年代の指導者に求めたいことがある。そう言うのは、昨年現役を引退し、今大会で初めて解説者として春高バレーを見た古賀幸一郎氏だ。Vリーグでベストリベロに6度も輝いたレジェンドは語る。
「選手はいくらでも情報を持っているし、求めればもっと情報が得られる世代。それは指導者も同様で、ネットを見ればいろいろな練習法や理論が溢れています。知ればその分全部を伝えて、やってみたくなってしまうかもしれませんが、指導者はその膨大な情報をすべて選手に伝えるのではなく、整理して、選手に必要な情報をピックアップして、かみ砕いてわかりやすく伝える。そういう力が求められるはずです」
うまくいかなかったことや相手エースを仕留められなかった要因を、ブロックで跳ぶ位置とレシーブの関係性、具体的なデータや戦術と共に述べる監督は多かった。だがすべてがそうとは限らない。試合中も声を張り上げ叱咤し、敗因を語る際に理由を述べるよりも「ダメだ」と指摘したり、心の甘さを理由にする指導者も少なくなかった。選手のバレーIQが上がったのだから、日々、選手と接する指導者もアップデートしなければならないのは当然のこと。
世界で戦うためのレフェリング
さらに、変化を求められるのは指導者だけに限らない。今大会、特に女子を見ていて気になったのが、オーバーハンドでのセット時にボールを手の中に入れてから上げる選手が多いこと。
一見すれば「持って」いるように見え、スタンドの記者席から見ていてもなぜキャッチ(ホールディング)の反則を取らないのか、と疑問を抱いたシーンは数えきれないほどにあった。おそらくそのままのやり方で、上のカテゴリーに上がれば、日本国内はすり抜けることができても国際大会ではほぼ間違いなく反則が取られるプレーだ。
指導者が基準を明確にし、普段の練習から取り組ませることはもちろんだが、試合で反則を取られなければ「これはダメなんだ」という基準がわからない。勝負を決める大事な場面で自分のオーバーセットが反則を取られて敗れたとしたらどうなるか。「自分のせいで負けた」と後悔させないためにも、高校生年代で世界を基準とした技術を徹底するために、取るべき反則はきちんと取って指摘する。審判のアップグレードも必要だ。