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セカンドキャリアでは監督に? 指導者講習会に参加した長谷部誠の“神準備”にドイツが感嘆したワケ
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2022/01/09 11:02
フランクフルトで今なお存在感を放つ長谷部だが、セカンドキャリアを見据え、指導者講習会にも参加している
錚々たる名将の下で蓄積された素晴らしい経験は、後進のために活かされるべきだろう。だからといって元プロがすぐにプロの指導者になれる環境を作ることが、彼らのセカンドキャリアをサポートすることにはならない。
「特別すぎる優遇措置を作るべきではない」
ドイツには、そう断言できる極めて分かりやすい教訓がある。実際に、まったく結果が伴わなかった事例があるのだ。
例外はアメリカで勉強し直したクリンスマンだけ
DFBは1990年のワールドカップ優勝メンバーに対し、本来なら10カ月かかるフースバルレーラー・ライセンス(UEFA‐S級ライセンス相当)を、わずか240時間で取得できるという特別優遇措置を認めていた。
しかし、プロ指導者としてトップレベルで大成した人物はいない。
あのディエゴ・マラドーナを封じたギド・ブッフバルトは日本でこそ成功を収めたが、ドイツではオファーがない。世界一のマンマーカーと恐れられたユルゲン・コーラーは、3部リーグのビクトリア・ケルンのU-19を率いていたが、2020年6月限りで退任となった。一度暫定監督としてトップチームを指揮したこともあったが、翌シーズンから再びU-19に。トップチームを担当するだけの指導能力がない、というのが理由だったという。
キャプテンだったローター・マテウスにしても、宮本恒靖が所属していた時代のレッドブル・ザルツブルクのヘッドコーチなどを経験し、その後ブルガリア代表監督を務めはしたが、2011年以降は指導者として仕事をしていない。
アメリカで勉強し直したユルゲン・クリンスマンだけが唯一の例外というのも興味深い。残念ながら、どれだけ素晴らしい経験をしていても、それを伝えていくスキルと知識とバックボーンがなければ、指導者として成功することはできないのだ。
指導者として成功するための3つのポイント
どうすれば、元プロ選手がプロ指導者としても確かな足跡を残せるようになるだろうか。大きなポイントは3つある。
1つ目は、彼らが指導者としての基本を学び、最初の一歩を踏み出しやすいシステムを構築すること。2つ目は、その過程で指導者としての資質を持った人物を見つけ出すこと。そして3つ目は、指導者としての能力を高めていける環境を作ることだ。
今回の『プレイヤーズ・パスウェイ』のプロジェクトは、成功へ導くための大事な第一歩になるだろう。
彼らは、上から4番目の位置に当たるB+ライセンス講習会を受講。内容は他の指導者が受けるものと同じだという。ちなみにドイツのライセンス制度は新たな構造改革が行われ、一番上からフースバルレーラー、A+、A、B+、Bとなっている。
そんな講習会で、実際に長谷部はどのように取り組んでいるのだろうか。