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セカンドキャリアでは監督に? 指導者講習会に参加した長谷部誠の“神準備”にドイツが感嘆したワケ

posted2022/01/09 11:02

 
セカンドキャリアでは監督に? 指導者講習会に参加した長谷部誠の“神準備”にドイツが感嘆したワケ<Number Web> photograph by Getty Images

フランクフルトで今なお存在感を放つ長谷部だが、セカンドキャリアを見据え、指導者講習会にも参加している

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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まもなく38歳の誕生日を迎える長谷部誠選手に関する2本の記事の後編です。(前編はこちら

 元日本代表キャプテンの長谷部誠は今月の18日に38歳の誕生日を迎えるが、いまでもチームに欠かせない戦力として元気にプレーをしている。「老いてますます盛ん」というほど老いてはいないが、ブンデスリーガ現役最年長選手ながら、ピッチ上では競り合いのシーンで若い選手を弾き飛ばすなどコンディションは良好なようだ。

 ドイツの『ビルト』紙によると、フランクフルトはすでに長谷部とコンタクトを取り、さらに1年間の契約延長の準備をしているという。

 どうやら、現役引退はまだまだ先になりそうだ。

現役選手対象の指導者講習会に参加

 そんな長谷部は今、新しいことにチャレンジしている。ドイツサッカー協会(DFB)が新しくスタートさせたプロジェクト、『プレイヤーズ・パスウェイ』の一環で開催された現役プロサッカー選手および、最近現役を退いた元選手を対象とした指導者講習会に参加しているのだ。

 日本ではプロキャリアを持つ指導者へのライセンス優遇措置などが議論されているが、ドイツではどのように位置づけられ、現在はどのような取り組みがされているのか。

 プロ選手のセカンドキャリアについて、DFBディレクターのオリバー・ビアホフが警鐘を鳴らしていたことがある。

「現役時代は周りのサポートがあるため、人生における決断を自分自身で下さずにすむ環境にいた選手たちが、突然すべてを自分で決めるのは難しい。セカンドキャリアを始める際、サッカーだけ取り組んできた者は問題に直面するケースが非常に多い」

 実に13年をかけて大学で経営学の学位を取得したビアホフは、生きていくための視点の必要性と、環境の大切さを誰よりも知っている。

 DFBアカデミー主任のトビアス・ハウプトも、「サッカー界では選手がそのシステムに合わせるように要求されている。その陰で、選手個々のあり方はないがしろにされてきた面があったかもしれない。引退後に自分の人生と真正面から向き合わなければならないが、その際に痛みを伴い、穴に落ちる危険も大きいのだ」と指摘している。

 DFBは、プロ選手に対してこれまで以上に引退後のサポートを充実させようとしており、そうした背景から生まれたのが『プレイヤーズ・パスウェイ』である。

「若い選手にこの経験を伝えていきたい」

 選手にとっては自分に合ったセカンドキャリアを歩むための支えとなるもので、またDFBにもプロの世界で様々な経験を積んだ者がドイツサッカー界のために経験と能力を還元できる仕組みを作りたいという狙いがある。

 選手には、いろいろな思いとビジョンがある。

 例えば、長谷部と同じく指導者講習会に参加しているドイツ代表のイルカイ・ギュンドガン(マンチェスター・シティ)は、自身の将来について次のように語っている。

「かなり前から引退後のキャリアについてどうするべきか考えていたし、その中で監督の仕事に関して特に情報を集めている。僕はこれまでペップ・グアルディオラ、ユルゲン・クロップ、トーマス・トゥヘル、ハンシィ・フリック、ヨアヒム・レーブといった多くの名監督の下でプレーしてきたし、今もしている。だから、若いサッカー選手にこの経験を伝えていきたい」

【次ページ】 例外はアメリカで勉強し直したクリンスマンだけ

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