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熱狂とカオス!魅惑の南米直送便BACK NUMBER
《45億円移籍から2年》中島翔哉が「ポルトの不良債権」扱い… 50試合で14得点7アシストしたライバルとの明暗
posted2022/01/09 17:00
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph by
Global Imagens/AFLO
フットボーラーのキャリアは、一寸先が闇だ。
実績を積み上げて強豪クラブに迎え入れられ、輝かしい未来が待ち受けていると思われた逸材が、故障、コンディション不良、技術的なスランプ、あるいは人間関係などのために実力を発揮できず、居場所を失うことがある。その一方で、それほど大きな期待をかけられていなかった選手が急成長を遂げ、主力となり、のみならずさらに格上のクラブから巨額の移籍金を積まれて華麗なステップアップを遂げることもある。
ただし、そのような状態がずっと続くとは限らない。両者の立場が再び入れ替わることも、十分にありえる――。
ポルティモネンセで飛躍し、中東経由でポルトへ
2019年7月、2人の若いアタッカーがポルトガルの名門ポルトの門を叩いた。
1人は、中島翔哉(当時24歳)。小柄で華奢だが、トリッキーなボールタッチと切れ味鋭いドリブル、精巧なスルーパス、強烈なミドルシュートが持ち味。東京ヴェルディのアカデミー出身で、カターレ富山、FC東京を経て2017年夏、ポルトガル1部の中堅クラブ、ポルティモネンセに加わった。
海外移籍を機に、中島は大きく飛躍する。すぐに左ウイングのポジションをつかみ、伸び伸びとプレー。リーグ戦29試合に出場し、10得点12アシスト。華麗なテクニックと創造性を披露し、地元メディアから「ファンタジスタ」と謳われた。
日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の目にも留まり、2018年3月のマリ戦に初招集されていきなり初得点。2018年ワールドカップ(W杯)出場こそ逃したが、大会後、森保一監督が就任すると、代表の常連となる。南野拓実(現リバプール)、堂安律(現PSV)と息の合った連携で美しいゴールを決めてファンを魅了し、「三銃士」とも呼ぶメディアも現れた。
2018-19シーズンの前半も、ポルティモネンセでリーグ戦13試合に出場して5得点6アシストと好調。多くのクラブからオファーが舞い込んだが、2019年2月、日本フットボール史上最高となる推定3500万ユーロ(約45億6000万円)の移籍金でアルドゥハイル(カタール)へ移った。
コパ・アメリカ後、与えられたナンバー10
この年の6月から7月にかけてブラジルで開催されたコパ・アメリカ(南米選手権)にも日本代表の一員として出場し、グループステージ(GS)の3試合すべてで先発。大会直後、ポルトが彼の所有権の50%を1200万ユーロ(約15億7000万円)で買い取り、5年契約を結んだ。
クラブは中島に背番号10を与え、会長は「どうしても欲しかった選手。攻撃の中心としての活躍を期待している」と語って小柄な日本人を抱き締めた。