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格闘技PRESSBACK NUMBER
父は服役、母は病に冒され「どう生きていけば…」 気鋭の格闘家YA-MANが路上で磨いた勝負度胸《RIZINで皇治と対戦》
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph byRISE
posted2021/12/28 17:05
9月23日にRISEで行われた北井智大戦。1Rわずか43秒、YA-MANは強烈な右フックでKO勝利を飾った
追い風が吹き始めた。続く9月のOFGマッチ2戦目は1R43秒、右フック一発で北井智大をKO。11月の中村寛との試合は通常のボクシンググローブを着用しての一戦となったが、1Rにダウンを奪って判定勝ちを収めたことで、YA-MANの評価は決定的なものになった。
対戦相手の実績は、いずれもYA-MANより上。中村に至っては前戦で元K-1王者の大雅からも勝利を収めている期待のハードパンチャーだった。YA-MANは路上で磨いた勝負度胸が役立っていると分析する。
「リングの中には審判がいるから(めったなことでは)死なないじゃないですか。でも、タイマンだと死ぬかもしれないんで」
皇治の煽り「ピーマンくん」にどう応える?
しかしながら、一気に台頭した理由は勝負度胸だけではない。YA-MANは理由のひとつとして、元WBA世界スーパーフェザー級スーパー王者・内山高志をはじめとするトップのプロボクサーたちとの関わりが多くなったことを挙げる。
「みんな考え方が違う。なので、その人の考え方を聞いて、自分に合っていると思ったら大樹会長と相談しながらどんどん取り入れる。最初はどんどん人のいいところを真似していく感じですね。反対に合わないと思ったら捨てていく。そういう考え方になったら、自然と自分の形になっていった。いまはたぶん(日本人として史上初めて世界4階級制覇を成し遂げた)井岡一翔さんの影響を一番受けていますね」
中村との一戦も打ち合っているように見えながら、YA-MANは相手の強打をウィービングなどのディフェンス技術を駆使して何度も避けていた。
「中村寛対策として、『打ったら動く』という練習を徹底して1カ月ほど続けてきた。それが勝手に試合で出たんだと思う」
その動きをYA-MANは“無意識の領域”と定義づける。
「これは内山さんが運営するボクシングジム『KODラボ』で(第44代OPBF東洋太平洋ライト級王者の)荒川仁人さんにパーソナルで週1回見てもらったおかげです。無意識でそれができるようになるまでやる。自分は荒川さんの考え方に影響されました」
勝負度胸がある一方で、実は緻密な理論派。YA-MANは一言で片づけることはできない、ニュータイプのキックボクサーなのかもしれない。先日、彼は中村戦のご褒美にRISEから支給されたMVPボーナスで、スナックを再開したばかりの母親を六本木の寿司屋へ連れていった。
そんなYA-MANは、大晦日のRIZINに初参戦。 “お騒がせ男”の皇治とキックボクシングルールで対戦する。トラッシュトークを大の得意とする皇治に「ピーマンくん」と煽られ、中指を突き立てられたYA-MANが、キャリアで上回る相手にどんな戦いを見せるのか。舐められたままでは終われない。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。