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「コーチとしての康生さんに幻滅したこともありました」鈴木桂治(現・男子代表監督)に井上康生が明かした“ロンドン五輪の後悔”

posted2021/12/29 11:06

 
「コーチとしての康生さんに幻滅したこともありました」鈴木桂治(現・男子代表監督)に井上康生が明かした“ロンドン五輪の後悔”<Number Web> photograph by Tomosuke Imai

井上康生の後任として、柔道男子日本代表監督を務める鈴木桂治。「コーチとしての康生さんに幻滅したことも」と語る理由とは

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中村計

中村計Kei Nakamura

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Tomosuke Imai

 東京五輪で柔道全日本男子チームを率いた井上康生前監督。柔道男子史上最多となる5個の金メダルをもたらした男は何者だったのか――。井上を近くで見てきた人々と本人の言葉から、その“実像”を明かしていく短期連載「静かなる革命児」。
 第5回は2012年秋から井上体制で重量級コーチを務めた鈴木桂治(現・柔道男子日本代表監督)の証言。鈴木は言う。「コーチとしての康生さんに幻滅したことも」。(全8回の#5/#6へ)

井上は言った「勝利至上主義で何が悪いんですか」

――井上康生さんは情にもろい面があって、山口香さんは「それが弱さとして出てしまうことがある」と話していました。近くで見ていて、そういう面は、確かにあったのでしょうか。

鈴木桂治(以下、鈴木) いや、でも、強化という立場にいる以上、勝利に対する魂の入れ方は、やっぱりすごかったですよ。強化委員会の時だったと思うんですけど、ある先生が「勝利至上主義になっているんじゃないか」と発言したんです。僕は内心、何を言ってるんだって思ったんですけど。ただ、普通はそう思っても、監督としたら周りに気を使って「そんなことないですよ。そこはバランスをとって……」みたいな言い方をすると思うんです。

 でも康生さんは、「勝利至上主義で何が悪いんですか」と言ったんです。おお、よくぞ言ったと思いましたね。相手が誰であろうとちゃんと自分の意見を言える人。もちろん、代表から一歩出れば、そこには勝利がすべてではない世界があってもいいんですよ。ただ、「少なくともここは勝利至上主義の集団であるべきだ」と言っていました。誰よりも勝利に対する貪欲さは持っている人ですよ。

――おそらく日本のありとあらゆる競技の中で、柔道の日本代表ほど、勝つことの厳しさにさらされ、かつ、そのことと向き合い続けてきた集団はないですもんね。

【次ページ】 井上体制で重量級コーチに就任した背景

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