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皇治が《バッティング問題》からのRIZIN再起戦勝利で次戦はシバター? 応援も批判も「モテてしゃーない」、お騒がせ男の“本質”とは

posted2021/11/27 17:01

 
皇治が《バッティング問題》からのRIZIN再起戦勝利で次戦はシバター? 応援も批判も「モテてしゃーない」、お騒がせ男の“本質”とは<Number Web> photograph by RIZIN FF Susumu Nagao

RIZIN.32のセミファイナルとして行なわれた祖根寿麻戦は、皇治にとって重要な再起戦だった

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橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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RIZIN FF Susumu Nagao

 考えてみたらおかしな話だ。

 11月20日の『RIZIN.32』沖縄アリーナ大会。セミファイナルに登場した皇治は昨年9月の初参戦以来、まだRIZIN未勝利なのだった。対戦相手、沖縄出身の祖根寿麻は修斗で環太平洋タイトルを獲得しているが、やはりRIZIN未勝利。

 それでセミファイナルなのか、初の沖縄大会はそのレベルなのか。そういう見方もできるが、しかし知名度、話題性、集客力といった面ではやはり皇治はRIZINの“トップ選手”なのだとも言える。

 K-1時代からそうだった。戦績を見ると勝ったり負けたり。だいたい2勝1敗ペースで、とりわけいいとは言えない。KOが多いわけでもない。ただ記者会見などで相手を巧みに挑発し、アンチも含めたファンを煽り、自分のポジションを確立していった。乱闘騒ぎも朝飯前。K-1では、そうして武尊とのタイトルマッチまでこぎつけている。会見の映像などがYouTubeで“回る”のも、今は大事な要素だ。

応援でも批判でも「モテてしゃーない」

 武尊戦が決まった時には、公開記者会見に“皇治軍団”と呼ばれる応援団が大挙して駆けつけた。大会となれば、しかもそれが地元の大阪ならその数はさらに増える。敵には毒舌、しかしファンへの感謝は忘れない。応援するにせよ「負けてしまえ」にせよ、皇治は常に注目を集める。彼自身もそれが分かって、あれこれ言われると「モテてしゃーない」と返してみせるのだ。

 といって、話題性だけで生きてきたわけではない。彼はしばしば「必死ですよ」と言う。格闘家である以上、勝たなくては格好がつかないし発言権もない。RIZIN初戦、那須川天心を相手にフルラウンド粘り抜いた試合の後でも「倒されない(ことを目的とする)競技じゃないんでね」と潔く完敗を認めていた。

 リング上で行なわれることに対する感性は至極真っ当。どれだけ毒づいても、根底にあるのは「勝ちたい」、「強くなりたい」という気持ちだ。そうでなければ、地元を出て活動拠点を東京に移したりはしないだろう。

バッティングの頻発…“実力のない反則野郎”のイメージ

「負けたら引退」

 沖縄大会出場が決まると、皇治は覚悟を語った。話題作りでもなんでもなかった。RIZINでは那須川に負け、大晦日の五味隆典との特別ルール戦(パンチのみ)に負け、今年は大阪でのキックトーナメントで敗れた。1回戦は自身のバッティングで相手の梅野源治が負傷しノーコンテスト。決勝では白鳥大珠にダウンを奪われて判定負けとなった。つまり1日2試合して勝ち星なし。

 決勝でもバッティングがあり、また以前から皇治の試合にはバッティングが多いことを指摘する声もあがった。頭を下げて相手の懐に飛び込もうとするファイトスタイルゆえなのかもしれないが、それは修正すべきことだった。ともあれイメージとしては“勝ち星=実力のない反則野郎”になってしまった。試合後には引退を示唆。それでも沖縄大会出場を決めたが、完全に追い込まれた状態だった。勝たなければ次はない。

【次ページ】 「これでまた負けたら、もうリングに上がる資格はない」

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