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衝撃の「22-0」青森山田はなぜ強い? 黒田監督が語る“選手権優勝”への最終段階「松木に意見を言える選手がたくさんいる」
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byJFA/AFLO
posted2021/12/28 11:09
夏のインターハイ、プレミアリーグも制した青森山田。選手権で「高校3冠」を達成できるか
「もちろん我々の耳にも『青森山田を倒す』という声は届いています。プレッシャーがないと言えば嘘になりますが、その言葉1つ1つに一喜一憂したり、メンタルがぶれていたら話にならない。目標としてもらえることは光栄なこと。でも我々は受けて立つとは思っていないし、いつでも青森山田のサッカーを目の前の相手に対して100%やりきる。ぶれた時点で、やり切ることなんて不可能なわけですから。ただそれだけです」
全身全霊をぶつけてくる相手と、「勝って当たり前」という視線の中で戦う。プレッシャーに押し潰されても不思議ではないが、それでも青森山田は勝ち続けている。
特に今シーズンの好調ぶりは際立っている。中でも夏のインターハイはゴールラッシュが続いた。1回戦は長崎総合科学大附属を相手に3-0、2回戦の初芝橋本に8-0、3回戦の丸岡にも8-0、準々決勝の東山には5-2。準決勝では静岡学園を相手に浴びたシュートゼロ本で4-0と圧勝。決勝こそ粘りのディフェンスを見せた米子北に2-1の辛勝となったが、6試合で30ゴールという驚異的な数字を残した。
「8-0というスコアを見ると“完勝”と思われるかもしれませんが、相手を押し込めている状況にもかかわらず、2本のシュートを許してしまった。そこには必ず、選手として、チームとしての課題が隠れているんです。枠内シュートであれば、なおさら原因を探らないといけない。負けた試合は当然、誰もが問題意識、課題意識を持ちますが、勝った試合でこそ何が問題だったかを考えることが大切なんです。常に学習材料を見つけて、日々の練習に落とし込んで、次の試合に入る。勝てば官軍、なんてことはありませんから」
「一番怖いのは勝ち続けること」
さらに黒田監督は、勝つことで生まれる“慢心”こそ最大の敵だと熱弁する。
「一番怖いのは勝ち続けること。これまできちんと習慣になっていたことの細かい部分が省略されてしまう。『やれて当たり前』という気持ちを削ぎ落とさないといけない。日々の練習で甘さをなくす作業をすることが重要だと思っています」