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衝撃の「22-0」青森山田はなぜ強い? 黒田監督が語る“選手権優勝”への最終段階「松木に意見を言える選手がたくさんいる」 

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安藤隆人

安藤隆人Takahito Ando

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photograph byJFA/AFLO

posted2021/12/28 11:09

衝撃の「22-0」青森山田はなぜ強い? 黒田監督が語る“選手権優勝”への最終段階「松木に意見を言える選手がたくさんいる」<Number Web> photograph by JFA/AFLO

夏のインターハイ、プレミアリーグも制した青森山田。選手権で「高校3冠」を達成できるか

 黒田監督を中心に積み上げてきた“ブロック”。今年、その上に立つチームの中心には絶対的エースがいる。J1・FC東京に内定しているMF松木玖生(3年)だ。黒田監督は松木に絶大な信頼を寄せるが、「彼がいるから強いというわけではない」と語気を強める。

「確かに松木は一切の妥協を許しません。周りに厳しいことも言う。それは自分に対しても一緒で、誰よりも率先して動いているし、全体を掌握している。だから、彼の言葉は文句にならずに響くんです。今の若者では珍しい存在だと思います。

 ただ一方でその強い個性はチームの中で浮く存在になる危険性も孕んでいる。今年のチームが強いのは、MF宇野禅斗(J2町田内定)、FW藤森颯太らが松木に対して面と向かって意見を言えるところ。もちろん、宇野や藤森に対して意見できる選手もたくさんいる。正直、私から見ていても厳しすぎるんじゃないかな、と思うくらい議論が活発化しているんです。

 それはここにいる全員が心から勝ちたいと思っているし、本気で成長を求めているから。県外の選手も多くいますが、雪国までやってきて青森山田の門を叩く時点で、自分が何をするべきか、何を目指すべきか、覚悟を持っている選手が多いからだと思います」

 今年の春、全体ミーティングを終えたキャプテン松木は黒田監督に向かってこう告げた。

「監督、僕たちは今年、3冠を達成します」

 それ以降、松木はメディアの前でもこの言葉を発信し続けた。

「27年前、100回大会で全国優勝や三冠を目指すなんて夢にも思わなかった。春先に松木の言葉を聞いた時は『そんな簡単なことじゃないぞ』と言っていたのですが、今はそれにふさわしいチームになった。選手たちが1試合たりとも負けたくないと言っているし、そのためにあらゆる努力、辛抱、工夫をしてくれている。チーム全員がキャプテンと言ってもいいほどの熱量を持っている。そんな気持ちにしっかりと寄り添ってあげることが、我々、指導者の役目かなと思っています。彼らがこの快挙を本当に成し遂げられるのか楽しみにしています」

「次の一世紀に繋がる大会に」

 最後に黒田監督は、100回の歴史を刻んできた先人たちへの感謝を述べた。

「戦争で中断した時期もありましたが、この大会を守り続けてくださったからこそ、100回大会を迎えられた。この節目の大会で監督としてベンチに座れるのはとても光栄なことです。100年の歴史の中で高校サッカーをこれだけ盛り上げてくれた先人たちがいる。高校サッカーの思いを背負い込みながら取り組んでくれた人たちがいる。僕らが100回大会を盛り上げているわけではなく、そういう人たちが僕らに100回目の舞台を与えてくれた。だからこそ、僕らは次の一世紀に繋がる大会にしないといけないと思います」

 松木を始め、今の3年生たちは2年連続、決勝戦で涙を飲んできた。今年の決勝は8年ぶりに国立競技場で行われる。記念すべき大会で横綱・青森山田はどんなサッカーを見せてくれるだろうか。

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