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大人気番組『SASUKE』の演出家が明かす“知られざるウラ側”と名物エリア誕生秘話「クリフハンガーは山田勝己さんの懸垂を見て…」
text by
平田裕介Yusuke Hirata
photograph byWataru Sato
posted2021/12/28 11:06
『SASUKE』第一回から演出として番組に携わる乾雅人さん
『SASUKE』が感動を生み出せる理由
ーーそうしたエリアがあるからこそ、感動を生みだすと。
乾 出場者もそうですが、視聴者も「こんなもの絶対できないよ」「ほらできなかった」となるわけです。ところが、次の回までに選手たちは練習してくるんですよ。そして誰もできなかったものを最初に攻略した瞬間、泣き叫んだりするんですね。そのひとつのエリアに情熱を傾けて、半年なり、1年なり、練習を積んできて、本番の1回こっきりのチャンスで掴めたときの驚きをみんなで共有するのが『SASUKE』の醍醐味じゃないかと。
なのでエリア構成は、100人やって80人ができるもの、50人ができるもの、20人ができるもの、そして0か1かっていうものをすこしずつ交ぜて作っていく。そこは現場としても、大事にしてますね。
ーーエリア構成は、現在も放送作家さんたちとブラッシュアップして新造されているのですか?
乾 いや、2012年から僕だけで考えています。
ーー新エリアのテストがどのように行われているのかも気になります。
乾 昔は体育大学の学生さんや体力自慢な方々にお願いしていました。けど、いまは『SASUKE』に出たい人たちが山のようにいる。しかも、日本各地にエリアを模したセットを作ってらっしゃる方がいて。そこへ日夜通っている未出場の人たちがいて、グループを形成しているんですよ。
たとえばAさんという人がセットを持っていたら、そこで練習させてくださいと若者たちが集まってくるんです。そこでAさんグループができて、そのなかでおのずと仕切り役も生まれてくる。
新しいエリアを作ったのでテスターが欲しいなとなったら、その仕切り役の方にお願いすると15人くらい集めてくれるんですよ。テスターをしてくれる人たちも「僕、こんなにすごいんですよ!」とアピールできるのでwin-winなわけです。
『SASUKE』に“池ポチャ”が欠かせないワケ
ーー『SASUKE』といえば“攻略失敗=池ポチャ”の図式やイメージが強いですが、これにはどのような狙いが。
乾 初回は浦安の東京ベイNKホールでの収録で、室内だったんですよ。室内だから大規模な池ポチャをやるのは難しかった。マットにボサッと落ちるけど、いまいち失敗感が出ない。
どうしたら失敗を表現できるか、僕、プロデューサー、放送作家で考えて。池にザボーンと落っこちて、泥水に浸かる画のほうが「これ失敗だよね」と明確に伝わるなと。じゃあ、泥水の池を掘れる場所といったら緑山スタジオしかないなって。それもあって、2回目からは緑山スタジオなんですよ。