オリンピックPRESSBACK NUMBER
五輪2冠・橋本大輝が求める“理想”とは何か? 激動のシーズン“金メダル締め”も…「基礎の部分が足りていない」
posted2021/12/17 11:02
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph by
KYODO
翼が生えたように大きく飛躍した1年を、ナンバーワンの演技で締めくくった。
12月11日から12日まで東京・代々木第一体育館で行なわれた体操の全日本団体選手権。今夏の東京五輪で金メダル2個、銀メダル1個を獲得した橋本大輝は、高難度の技を次々と成功させ、3年ぶりの男子優勝を飾った順天堂大学を牽引した。
「本当に感謝の気持ちしかありません」
出場したのはつり輪以外の5種目。最初のあん馬で15.100点をマークすると、2種目めの跳馬では「ロペス」をほぼ完ぺきに決めて15.200点の高得点を叩き出した。続く平行棒と鉄棒も15点を超え、終わってみればゆか(14.900点)以外の4種目で15点超え。仮につり輪で13.200点以上を出していれば、東京五輪の自身の優勝スコア88.465点を上回るという圧巻の演技だった。
最後のゆかで着地を決め、右手人差し指で「1番」のポーズをつくった橋本は、優勝インタビューの冒頭で、仲間に感謝した。
「順天堂大学の一員として優勝メンバーになれたことは光栄なこと。(団体の)他の5人や、メンバーに選ばれなかった全員の思いを背負って戦い、さらには監督、トレーナー、色々な人の支えがあって優勝することができました。本当に感謝の気持ちしかありません」
支えられたという思いが自然と沸き上がったのは無理もない。大会前は万全から程遠かったのだ。
世界王者が見せた「チームの勝利に徹する姿勢」
橋本は今夏の東京五輪に続き、10月には世界選手権(福岡県北九州市)にも出た。1年間に五輪と世界選手権の両方を行なうイレギュラーなスケジュールの中で、エースとしての責任を背負いながら戦ったことにより、疲労が抜けきっていなかったのだろう。大会前に順大で行なった試技会では鉄棒で手の突き指があり、平行棒では足を強打。満足に練習を積めないまま臨んだ全日本団体選手権だった。地力の部分で一頭地を抜いていた。
仲間への感謝は次々と口から出た。最初のあん馬で1人目に出た三輪哲平(3年)が、緊張の空気の中で演技をまとめたことについて触れ、「その後で僕も楽に行けた。ここから波に乗って、勢いで最終種目まで行けた。伸び伸びと演技をできたと思います」と言った。