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五輪2冠・橋本大輝が求める“理想”とは何か? 激動のシーズン“金メダル締め”も…「基礎の部分が足りていない」
text by
矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKYODO
posted2021/12/17 11:02
五輪と世界選手権を両方行なった2021年シーズンを、圧巻の演技で締めくくった日本のエース・橋本大輝
大技を自重し、チームの勝利に徹する姿勢も見せた。跳馬はDスコア6.0の「ヨネクラ」に挑戦する予定だったが、「冨田(洋之)先生に『え、ロペスでしょ?』と言われてロペスにしました」という。
ロペスはヨネクラよりひねりが半分少なく、Dスコアは5.6。「そのかわり、着地を止めてこいという課題を与えられました」と言い、見事成功。Eスコアは自己ベストの9.600点だった。
「良い跳躍でチームの役割を果たすことができたので、(ヨネクラを)回避して良かったと思いました。チームで1番を取ることが目標だったので、チームのために戦うことができて良かったと思う」と、ここでも笑顔を見せた。
磨いてきた“鉄棒の着地”も「反省点がまた出た」
悔しさをのぞかせたのは、この1年間、課題となっている鉄棒の着地でしっかりと止まれなかったことだ。とりわけ課題が浮き彫りになったのは、鉄棒の着地でメダルの色が分かれた世界選手権。同大会で内村航平がパーフェクトな着地によって見る者に感動を与えたことが、課題克服への覚悟をさらに強くさせた。
世界選手権の後は母校である市立船橋高校に行き、高校時代に教わった神田眞司総監督に再び教えを請うた。順大での練習を再開した後は冨田コーチをはじめとする色々な先生のアドバイスを受けた。そのうえで団体選手権までの間に、「呼吸で息を吐く時の位置を意識することや、(バーから手を)離す前の車輪で思い切り体をのけぞらして、一気に持ってきてから抜いていくという練習をしてきた」(橋本)。
努力によって練習では改善がみられているという。本番で完ぺきな着地をするまでには到達できず、「今日はちょっと前に飛んでしまった。そこの反省点がまた出たなと思っています」と語ったが、だからこそこれからはもっと練習を重ねていくのだろう。
橋本が見据える「明確なビジョン」
そんな橋本の話を聞いていてハッとさせられたことがある。会見の序盤に来年の抱負を聞かれた橋本は「もっと自分の体操を突き詰めていきたい。理想の演技を求めてやっていく1年にしたいと思っている」と答えていたのだが、会見の後半にもその点についてさらに言及したのだ。