「僕自身まだ基礎の部分が足りていないと思っている」と切り出した後はそれこそ立て板に水がごとく、次から次へと言葉が出てきた。

「鉄棒の車輪はだんだん理想的になってきたのですが、あん馬の旋回が少しこぢんまりしてきていることに最近気づいてきていました。ゆかでは蹴りが入らなくなって跳躍の高さがなくなってきているので、どうやったらもう少し高さができて余裕が出てくるのかというところも考えています」

ライバルは中国・張博恒。再び世界一へ

　Eスコアで9.600点の自己ベストを出した跳馬についても、9.533点だった5月のNHK杯と比較し、「NHK杯の時には着地の前にゆかを確認するのが遅くなったが、今回は確認できていたので評価されたのかなと思っている」と詳細に分析。「でも、空中の局面で腰が曲がっているのかもしれないので、映像を見て次に活かしていきたい」とさらに突き詰めていくことも口にしながら、今後への覚悟を見せた。

「技の（難度を上げる）ことより、そういう基本的なことを突き詰めていきたいというのと、突き詰めた後はそれを継続的に、計画性を持って怠らずにやっていきたいと思っています」

　もちろん、唯一苦手としているつり輪についても強化に取り組む。

「僕自身、力の入れ方や身体の使い方がまだ分かっていない。もう少し上手に体を使わないと体への負担も大きくなってしまうので、力技だけではなく、技術的なところをもっと磨いていきたい。いろいろな角度から映像を撮って、良い見せ方をできるようにしたいです」

　2021年は東京五輪で2冠に輝いた後、世界選手権の個人総合では中国の21歳の新星・張博恒（ジャン・ボーヘン）に0.017点及ばず、銀メダルに甘んじた。

「来年はもう一度世界のチャンピオンになって、団体で世界一になりたいと思っています」

　輝くたびに足元を見つめることを忘れないエースが、またひとつ大きく見えてきた。

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