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《1、2年目で見切られた若手~39歳が参加》Jトライアウト運営・元プロ選手の願いと“安田理大33歳のPR動画”とは
text by
海江田哲朗Tetsuro Kaieda
photograph byTetsuro Kaieda
posted2021/12/15 06:00
野球のイメージが強いトライアウト。サッカーの場合は選手会が主催になって運営される
2016シーズンを最後に現役を退いた戸川は、現在、DAZNのJリーグ中継解説者として活動するほか、自身の興した株式会社Socrates(ゼンシングループ)の代表取締役を務める。トライアウトの運営には、JPFAのアドバイザーとして携わっていた。
戸川もまた、トライアウトの経験者だ
戸川もまた、トライアウトの経験者だ。2014年、ガイナーレ鳥取を契約満了となり、トライアウトを経て福島ユナイテッドFCに移籍。2年間プレーしたのち、35歳でスパイクを脱いだ。
「あのときは選手としてやり切った実感がなく、最後まで足掻きたくなってトライアウトに出ました。自分のすべてを出し尽くしてなお、どこからも話がなかったら辞めよう、と。久しぶりに味わうテストのような場は新鮮でしたが、非常に緊張して疲れた記憶がありますね」
そう語る戸川には、この場に立たされる選手の気持ちの揺れ動きが手に取るようにわかる。好き好んでエントリーする者はおらず、フリーとなってすぐに納得いくオファーを受けられればそれが一番よい。
参加選手と事前に打ち合わせ、希望するポジションを聞き取り、チーム分けに反映させるのは戸川の仕事だ。あちらを立てればこちらが立たずで、バランスよく組み込むのは大層苦心するらしい。
「すべての要望を満たすことはできず、部分的には我慢を強いることもあります。チームとして成り立たせつつ、個人が最大限のパフォーマンスを出せるようにできる限りの配慮をします」
「ああいったベテランの姿勢が若い選手にとって……」
注目選手のひとりである安田について話を振ると、戸川は笑いながら言った。
「彼はプロですよ。開始前の自己紹介の際、『今日は初めてのメンバーばかりですが、協力し合い、みんなでいいアピールをしましょう!』と明るく挨拶をし、緊張をほぐすアイスブレイクの役割を買って出てくれた。ああいったベテランの姿勢が若い選手にとってどれほど助けになるか」
安田のような実績豊富な選手はほんの一部だ。大半は近年の出場機会が乏しく、なかには意気揚々プロの世界に飛び込んだまではいいが、わずか1、2年で見切られた若い選手もいる。
「若手の場合は、その人の持つ特長がチームにはまらなかっただけという可能性もある。経験の浅い選手が限られた時間で持ち味を発揮するのは簡単ではありませんが、のびのびとプレーして自分の長所をこの場に全部置いていってほしいと願うばかりです。選手生活を送るうえでは、難しい状況に立たされたとき、試合に出られないときにどういった態度を取れるかが大事になる」
皆、そのことを頭で理解していても、行動を伴わせるのは容易ではない。ある程度のキャリアを積み、その過程において人間性を育んだからこそ見えてくる景色があることを戸川は知る。