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Jリーグを目指す有望クラブでまさかの“クラスター発生” 32歳代表と23歳指揮官は福山シティFCの危機をどう乗り越えたのか
posted2021/12/14 17:00
text by
宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya
photograph by
Tetsuichi Utsunomiya
2021年のJリーグが終わり、今季の日程は天皇杯決勝を残すのみとなった。前回大会で優勝したのは川崎フロンターレだが、実は彼らは準決勝と決勝の2試合だけを戦って、このタイトルを初めて手にしている。そのことを記憶しているサッカーファンは、果たしてどれだけいるだろうか?
記念すべき昨年の第100回天皇杯は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、J2とJ3の優勝クラブが準々決勝から、そしてJ1の上位2クラブが準決勝から、それぞれ出場することとなった。Jクラブとアマチュアの対戦が、ようやく実現した準々決勝。注目を集めていたのが、広島県代表の福山シティFCであった。
“新卒1年目”の監督と平成元年生まれのクラブ代表
福山シティFCが所属するのは、JFLの下の中国リーグのさらに下、広島県1部である。J1から数えて6部に相当する県リーグのチームが、J3を制したブラウブリッツ秋田と対戦するということで、試合はNHK BS1で生中継された。
結果は3−1で秋田の勝利。順当な結果ではあったが、格上相手にも攻守において主導権を握ろうとするスタイルに、SNS上は騒然となった。
「あの試合を映像で振り返ると、後半に点を決めるチャンスが2回ありました。しかも、どちらも相手を完璧に崩し切っていたんです。ただしフィニッシュで枠の外だったり、相手が一瞬早くブロックに入ったりして、得点に結び付けることはできませんでした。正直、勝ってもおかしくない内容だと思っていたので、あの時は本当に悔しかったですね」
そう語るのは福山シティFCの23歳の指揮官、小谷野拓夢。当時は新卒1年目ということで、そのことばかりがメディアでも流布されていた。とはいえクラブ代表の岡本佳大も、平成元年生まれの32歳。当人は「あまり自分の年齢を意識したことはありませんよね」と苦笑しながら、こう続ける。
「たまたま今の自分が32歳なだけであって、何歳であってもクラブが目指すものに変わりはありません。そもそもビジネスの世界で、32歳は決して若いとは言えないですよね(笑)。そうやって意識を変えていかないと、日本が世界に打って出るのは難しいでしょうし、それはサッカーに限った話ではないと思います」