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Jリーグを目指す有望クラブでまさかの“クラスター発生” 32歳代表と23歳指揮官は福山シティFCの危機をどう乗り越えたのか 

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宇都宮徹壱

宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya

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photograph byTetsuichi Utsunomiya

posted2021/12/14 17:00

Jリーグを目指す有望クラブでまさかの“クラスター発生” 32歳代表と23歳指揮官は福山シティFCの危機をどう乗り越えたのか<Number Web> photograph by Tetsuichi Utsunomiya

1997年12月24日生まれの小谷野拓夢監督は“新卒2年目”にあたる23歳。就任の背景には「若い指導者の育成を目指す」というクラブの理念があった

 若き監督と若き代表に率いられ、広島県第2のJクラブを目指す福山シティFC。そんな彼らが、実は今年も県1部を戦っていたことを知る人は、そんなに多くはないはずだ。

 伝説的な天皇杯から1年。彼らはどのように、今シーズンを戦っていたのか。そもそも福山シティFCとは、どんなクラブなのか。中国リーグ昇格が決まった今、あらためてフォーカスしてみることにしよう。

なぜ福山市なのか? なぜ若い指導者なのか?

「福山シティFCは、地域解決型総合クラブです。サッカーやスポーツは、ツールでしかない。今は県1部ですが、あくまでプロフェッショナル集団として、活力ある福山市の未来創生に寄与していく。そのために2022年には、一般社団法人から株式会社化し、Jリーグ百年構想クラブの申請を目指します。そして24年には福山市にサッカー専用スタジアムを作ることを目指します」(岡本)

「今年の目標は、中国リーグへの昇格。全社(全国社会人サッカー選手権大会)優勝。そして、天皇杯でのJクラブ撃破。地域CL(全国地域サッカーチャンピオンズリーグ)出場は来年以降になりますが、そこから逆算した戦いをしていきます」(小谷野)

 今年1月に行われた、クラブの新体制発表会。NHK広島放送局をはじめ、その日は地元のテレビや新聞社が勢揃いしていた。とても県1部のクラブとは思えない注目度。それ以上に驚かされるのが、若き代表と監督のビジョンが非常に明確で、かつ説得力がひしひしと伝わってきたことだ。これまた、およそ県1部のクラブとは思えない。

 ホームタウンの福山市は、広島県東部に位置し、広島市に次ぐ県内2位(約46万人)の人口規模を誇る。福山市を中心とする備後都市圏は、広島市とは異なる文化圏と商圏を形成。山陽新幹線の停車駅もあることから「県内でJクラブを作るのに、これほど適した環境はない」と確信したのが、広島市出身の岡本であった。

「広島市にはサンフレッチェがあるし、プロ野球はカープが、Bリーグはドラゴンフライズがあります。プロスポーツに関しては、はっきりいって飽和状態でした。そこで、私の目に留まったのが福山市。サンフレッチェやカープの影響も薄いし、地元の人は『コト足りるけど、モノ足りない』と感じている。そういう土地だからこそ、Jクラブを作るのには立地として最高であると確信しました」

【次ページ】 クラスター発生と全社中止を乗り越えて

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