JリーグPRESSBACK NUMBER
Jリーグを目指す有望クラブでまさかの“クラスター発生” 32歳代表と23歳指揮官は福山シティFCの危機をどう乗り越えたのか
text by
宇都宮徹壱Tetsuichi Utsunomiya
photograph byTetsuichi Utsunomiya
posted2021/12/14 17:00
1997年12月24日生まれの小谷野拓夢監督は“新卒2年目”にあたる23歳。就任の背景には「若い指導者の育成を目指す」というクラブの理念があった
「ちょうど福山市内で感染者が増えていた時期だったんですが、クラスターの発生は想定外でしたね。もちろん、われわれも感染対策は徹底していました。ただし選手はアマチュア契約であるがゆえに、クラブ外での活動部分を完璧にコントロールできなかったのが原因です。この時、われわれが心がけたのは、透明かつ迅速な情報公開。感染状況とその後の経過について、包み隠さず発信することに努めました」
公式サイトでクラスター発生を発表したのは9月1日。全社の開幕まで、およそ1カ月というタイミングだった。現場もフロントも苦悩する中、栃木県で開催されるはずだった全社は、感染リスクを考慮して9月11日に中止が決定。当時の複雑な心境について、小谷野はこう吐露する。
「ほっとした気分と残念な気持ちが半々でしたね。濃厚接触者を含めて16名がチームから離脱して、しばらく10人でトレーニングしていましたから。中途半端な状態で参加しなくてよかったと思う反面、初戦の相手は関東1部で首位を走っていた栃木シティFC。どこまで通用するか、やってみたかったという思いもありました」
とはいえ、この危機がチームを結束させ、それが中国リーグ昇格につながったのも事実。加えていえば、クラスター発生時の情報公開が透明かつ迅速だったことで、福山市民やスポンサー企業のクラブへの信頼はさらに高まることとなった。今後、上のカテゴリーで戦う上で、これほど心強いことはないだろう。苦しかった今季の総括、そして新しい舞台で戦う来季の展望について、最後に岡本に語ってもらおう。
「昇格できなかった悔しさを、一瞬たりとも忘れることのなかった1年でした。それだけに、昇格を決めた時は純粋にうれしかったし、深い安堵感を得ることもできました。来季、より負荷がかかる試合ができることが楽しみです。そして小谷野体制も、いよいよ3年目。監督の年齢やカテゴリーに関係なく『これだけのサッカーができるんだ』というものを、福山の地から全国に発信していきたいですね」
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。