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《J2降格》武藤嘉紀が称えた「本当に良いチーム」の悲しい結末… 徳島ヴォルティスは“強いチーム”としてJ1再昇格を誓う
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/12/07 11:01
ホームでの最終節終了後、徳島ヴォルティスの岸田一宏社長は涙ながらに1年での再昇格をサポーターに誓った
「運任せのサッカーをしていると未来はない」
夏以降、いわゆる自分たちのスタイルを崩さない“良いチーム”として戦えるようになった徳島だったが、10月に残留争いの直接対決で横浜FCに3-5で敗れると自信が揺らぎ、続く大分トリニータ戦も1-1で引き分け。今の徳島のスタイルの象徴でもある岩尾が「自分たちが大事にしてきたもの。今年というよりも4年以上かけて大事にしてきたものが、結果によってとか、風によって(※大分戦は強風の中で行われた)とか、そういったものでなかったかのようになってしまったのは寂しい」「運任せのサッカーをしていると未来はない」とさえ言ったこの試合での姿は、徳島が相当追い詰められていることを示していた。
クラブとして築いてきたものを無駄にしないため、揺らいだアイデンティティを喪失させないための戦いとなった11月3日のセレッソ大阪戦では、前半終了後に岩尾が負傷交代。崩壊してしまう可能性も十分に考えられたが、ここでピッチに残された選手たちが導き出した答えは「自分たちのやりたいことを全員が意思統一して臨むことが大切」(MF岸本武流)ということだった。「ピンチをチャンスに、ではないが、ひとりひとりがさらに責任感を増して戦えるように、というメッセージだととらえて取り組めていたと思う」(GK上福元直人)と奮闘したチームは、0-1で敗れたものの徳島らしさを取り戻してみせた。
そして3日後。チームの心臓だった岩尾がいない徳島は、神戸戦で冒頭に紹介した武藤の称賛をよぶ素晴らしいプレーを披露することになる。岩尾は、助け合うことだけでなく役割をひとりひとりがしっかり果たせばそれもチームワークのひとつの形、という考え方を持っていたが、この状況で徳島はその両方を見せ、しかもアイデンティティも揺らがない“良いチーム”になった。
4カ月遅れで新監督が合流し、3カ月かけて元来のスタイルとの融合を果たし、そこから3カ月で再び困難と直面し、それを乗り越えて迎えた最終盤。ラスト3試合では岩尾も戻り、徳島はさらなる“良いチーム”としてFC東京、湘南ベルマーレに連勝。最終節まで残留の可能性を残した。
広島の積極性の前に散った最終節
しかし12月4日の最終節。ホームにサンフレッチェ広島を迎えたチームは2-4で敗れた。
J2では自分たちが主導権を握り続けることができたが、J1ではそうはいかない。そこで効果的な武器になっていたのが、序盤にじっくり様子をうかがってから崩しにかかるというやり方だった。どうボールを動かすと相手がどう動くのか、誰がボールを持つと相手がどう対応してくるのか。東京と湘南に連勝した戦い方はJ1定着への鍵になりそうだったが、広島はそれを許さない積極性であっという間に2得点を奪った。