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《J2降格》武藤嘉紀が称えた「本当に良いチーム」の悲しい結末… 徳島ヴォルティスは“強いチーム”としてJ1再昇格を誓う
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/12/07 11:01
ホームでの最終節終了後、徳島ヴォルティスの岸田一宏社長は涙ながらに1年での再昇格をサポーターに誓った
2点目を失った選手たちは中央に集まったが、そこでは「『失うものは無いのだから、しっかりとサッカーしようよ』というようなポジティブな発言が、僕だけではなくいろんな選手から出ていた」(岩尾)という。
それでも、前半に3失点目を喫してしまい勝負あり。「途中でどんなに良い試合をしても、際の戦いにおいて本当の力や練習の成果が出てしまうのかなと。1年間手を抜いてやったつもりはないが、必死に走ってきた結果がこれだということは受け止めなければならない」(岩尾)という結末になってしまった。
J2降格でも「大きな未来」を見据える姿勢は変わらない
それでも、徳島にとっての新たな目標になったJ1定着は、間違いなく2017年から築いてきたものの先にある。一度叶わなかったからといって、すぐに捨てることはあり得ない。
地方クラブは特定の監督や選手に依存しないようなしっかりした色を持つことで、安定してJ1で挑戦し続けることができる、というトレンドが生まれている。
サガン鳥栖はユースの整備とポジショナルプレーの採用で躍進し、コンサドーレ札幌はミハイロ・ペトロヴィッチ監督のいわゆる“ミシャ式”ではなく、フロント主導でオールコートマンツーマン戦術を採用した。11月3日にJ1残留を確定させたペトロヴィッチ監督は「札幌は5シーズン連続で残留した。クラブ規模を考えれば成功と言っていい。J1で安定した戦いができるようになり、自分たちのスタイルも持てるようになった。一定の評価を得ているはずだ。札幌のサッカーはこういうものだ、というものを知ってもらえたことも、われわれが勝ち取ったもののひとつだ」と語った。コメントの後半部分については、今年の徳島も成し遂げたことだ。4チーム降格という厳しすぎるレギュレーションの中、最後の最後までアイデンティティを捨てずに“良いチーム”のままJ1を戦い抜いたのだから、この先も徳島らしさは変わらずにいられるだろう。
“面白いチーム”としてプレーオフの最後で散った2019年。“良いチーム”としてJ1を最終節で去ることになった2021年。次なる挑戦では、“強いチーム”としてJ1定着を果たせるだろうか。
涙をこらえながらスピーチを続ける岩尾はこうも語った。
「もっと大きな未来を見据えて努力する姿勢は変えてはいけない」
降格か残留かに関係なく、J1を1年間戦い終えた時に、選手・スタッフ・フロント・サポーター、その誰もが徳島のサッカーとはこうあるべきだという共通認識ができている。それはJ1の他チームのサポーターも羨むものだろう。
困難なシーズンは悲しい結末を用意したが、徳島ヴォルティスというクラブの大きな未来への歩みが、間違いなくそこにはあった。
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