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南野拓実vs冨安健洋「プレミア名門で日本人対決」は香川、吉田、岡崎も未達成… リバプールvsアーセナルが秘めた《3つの意義》
text by
田嶋コウスケKosuke Tajima
photograph byPA Images/AFLO
posted2021/11/22 17:05
試合後、ユニフォーム交換する南野拓実と冨安健洋。現地映像のカメラが2人を捉えていたことが、その価値を証明している
しかし、アーセナルは次第に劣勢に。左FWマネと左SBコスタス・ツィミカスの流れるようなアタックに、冨安も突破を許すようになった。後半10分にはチアゴの激しい寄せで転倒し、自陣深い位置でボールロスト。「あわや失点」という決定的な場面を迎えたが、CBベン・ホワイトのシュートブロックで事なきをえた。速さと強さを備えるリバプールに、日本代表DFは最後まで苦しんだ印象だ。
ただ、冨安にとって学びの多い一戦になったのではないだろうか。リバプールが見せた「インテンシティの高さ」や「試合展開の速さ」は、イタリアやベルギーではまず体験できるものではない。1対1の局面における力強さや激しい寄せ、そしてカウンターのスピードは、やはり世界レベルにある。マネとのマッチアップを含め、今後に向けて課題が見えたのではないか。
南野は試合後、観客に向けて何度も左胸を
対する南野は、貴重な「今季プレミア初ゴール」を決めた。
今季リーグ戦の出番はわずか3試合。ここまで先発は一度もなく、いずれも途中交代での出場だ。主戦場はチームとして優先順位の落ちるカップ戦で、アピールしたくても出番がなかなか回ってこない現状に、本人も小さくない焦りを感じていたはずだ。
それだけに、限られたチャンスをモノにした意味は大きいだろう。ゴールネットを揺らすと、熱狂的なサポーターが集うKOPスタンドに向かってガッツポーズ。そのままコーナー付近まで突っ走り、チームメートにもみくちゃにされた。
試合が終わって選手通路口に引き上げる際にも、メインスタンドの観客に左胸を何度も叩いていた。アンフィールドでの初ゴールに「俺はクラブのために決めた」と、そう訴えているようだった。
得点時は冷静そのものだった。
サラーが右サイドで十分にタメを作り、サイドを駆け上がるトレント・アレクサンダー・アーノルドに縦パス。アーノルドが低く速い弾道のクロスボールを入れると、ファーサイドに詰めていた南野が右足で押し込んだ。スムーズな連携から敵の守備網を完全に崩し切ったゴールであり、おそらくトレーニングでも繰り返し練習しているパターンなのだろう。
途中出場からわずか48秒での得点に、英サッカーサイト90minは「すぐにインパクトを残した。クロップは南野にこれ以上の要求はできない」とし、チーム最高点タイの8点の高評価を与えた。
試合後、ドイツ人指揮官も次のように褒めた。
「私がタキ(南野)にどれほど満足しているか想像できないだろう。彼は信じられないほど調子がいい。実際、タキは4つのポジションにおける交代で重要な解決策になっている。3トップのポジションに加え、8番(インサイドMF)でもプレーできるからだ。調子がいいのは、プレーを見ていれば分かる。日本代表でプレーし、今はここに戻ってきて、非常に重要な存在だ。タキがゴールを決め、誰もがうれしく思っている。タキはトレーニングで良い動きを見せているが、今日はその通りのパフォーマンスだった。今後出番が増えるのは間違いない」