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野球クロスロードBACK NUMBER
ソフトバンク松田宣浩(38歳)が語る“王者失墜”の原因「そこは結構、大きいところでしょ」「山本由伸クラスは技術だけじゃ打てんすよ」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2021/11/24 11:02
今季、プロ通算300本塁打を達成したソフトバンク松田宣浩。38歳の“熱男”は、昨年までの4年連続日本一から一転、4位に低迷したチームをどう見るのか――
「打てないからいろいろ試そうと思いますよね。1打席、1打席『次に繋がることをしたい』とか思ってやっていましたけど、微調整しすぎたかな? 一貫性がなかったから、爆発できる期間が少なかったんですね。いい時って、毎日同じことをやっても打てるんですよ。35本打った時の映像、ユーチューブに上がってるんで観るんですけど、かっこいいもんね。エネルギッシュに打ってるもん」
松田が最後に回想したのは15年だ。35本塁打と94打点は自己最多。打率2割8分7厘も、フル出場を果たしたシーズンでは最も高い数字である。
勘違いしてほしくないのは、松田は今季の成績から目を背け、過去の栄光にすがっているわけではないことだ。15年の自分に近づけている手応えを抱いているからこそ、言霊に乗せているのである。
それは、記念すべき通算300本塁打の翌日、9月30日の西武戦で放った301号――すなわち、今季最後のアーチで表現されていた。
最後の最後に取り戻した“マエテギュン”
<久しぶりにマエテギュンで、ギュンギュンという感じで打つことができました>
松田は球団を通じ、松本航に見舞った一発についてそうコメントした。昂揚感からのリップサービスのように受け取られそうなこの解説にこそ、打撃の本質が詰まっていた。
「マエテギュン」とは、正式には「前手ギュン」である。初めて世に出たのは11年で、当時ロッテに在籍していた韓国代表の主砲、金泰均(キム・テギュン)から着想を得て命名された打法だった。
前の手でギュンとボールを乗せる――つまり、両腕が伸び切らんばかりのポイントでボールをミートし、押し込むように弾き返す。これが不振の今季、微調整を繰り返していくなか、最後の最後で取り戻した形だった。
「僕的には超理想です。『あんな前で捉えて、よう打てるな』ってみんなには言われますけど、僕らしい打ち方。それを再確認できたのが、301本目の“前手ギュン”かもしれないです。ああいうのが僕らしいホームランです。反応が鈍くなったりすると、どうしてもポイントが近くなって凡打になるし、逆に『前で、前で』って意識しすぎてもダメ。今年はそれが多かったかな? “前手ギュン”じゃなくて“前ベロ~ン”。バットがベロ~ンって前に出過ぎちゃうっていうね(笑)」
捉えたボールの感触がバットを通じ、両腕、そして体全体に浸透する。