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野球クロスロードBACK NUMBER
ソフトバンク松田宣浩(38歳)が語る“王者失墜”の原因「そこは結構、大きいところでしょ」「山本由伸クラスは技術だけじゃ打てんすよ」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byIchisei Hiramatsu
posted2021/11/24 11:02
今季、プロ通算300本塁打を達成したソフトバンク松田宣浩。38歳の“熱男”は、昨年までの4年連続日本一から一転、4位に低迷したチームをどう見るのか――
「大事なのは、こっちが不利にならないこと。バッティングのカウントで言えば、若くて経験の浅いピッチャーなら初球を見逃したり、2ナッシングになっても『甘いボールやったら打っていこう』って意識で、ボール球を見極められるけど、山本由伸投手の場合はそうはいかない。『まだ1球目だから』って見逃したら、あとはいい球を投げられて手が出せないことが多い。だから、1球目から負けないようにすることが大事なんです」
松田の「根性」とは、言い換えれば「駆け引き」だ。自分が優位性を保つことによって、相手に圧力をかけられる。それがパフォーマンスへと結びつく、という意味である。
「そう! その根性。あのクラスの投手は技術だけじゃ打てんすよ」
相槌に力が入る。ただ同時に、松田はシーズンを通しての自分も俯瞰していた。
今季は「微調整しすぎたかな? 一貫性がなかった」
成績が振るわなかった理由。
虚勢を張らず、つまびらかにする。
「結果が欲しかったからでしょうね。数字を出したい。そういう想いがあったから」
根性を引き合いに出すならば、そこに至るまでの技術やスタイルが構築されていなければ、安定して「根性」を発揮することができない。それが今季は足りなかった。
絶対的なレギュラーに座っていた頃の松田は、打席に立ち、ピッチャーと対峙した時点で勝負を決めていた。
打席から見て、プレートに立つピッチャーの位置を左、中央、右と三分割し視認する。その際、いずれかに“目に見えないライン”が引かれているように感じれば、松田の勝ち。相手ピッチャーの利き腕、オーバースローだろうがサイドスローだろうが関係ない。ラインが見えていれば打てるし、『どこを見ればいいか?』と一瞬でも逡巡した時点で負けだ。
今年はそのラインをなかなか導けなかった。そのため、打席で苦心した。松田は他の選手と比べホームベースから離れて立つ。右バッターの松田の場合、左足をしっかりと前に踏み込み、全身の力を使ってバットにボールを乗せてこそ、力強い打球が飛ばせる。しかし、快音が続かないと打席での立ち位置をホームベースに少し近づけたり、左足の使い方を変えたりと、微調整を繰り返すようになった。これがよくなかったと、松田は反省の弁を述べる。