第98回箱根駅伝(2022)BACK NUMBER
長距離以外の部員は〈箱根駅伝〉をどう見ているのか。ハードル選手・山内大夢(早大4年)の場合
posted2021/12/02 11:00
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Satoshi Wada
当たり前のことだが、1月2日、3日、箱根駅伝を走っているのは、長距離種目に取り組む部員たちだ。
戦中や戦後すぐには、長距離部員だけでメンバーを揃えられず、短距離や跳躍、さらには投擲の選手、なんとラグビー部員までもが箱根路を駆け抜けたこともあったが、それは遠い昔の話だ。
だが、今の時代であっても、箱根駅伝が円滑に開催されるために、長距離ブロック以外の部員の力も必要とされている。
「僕も1、2年生の時には、学生補助員としてコース上で走路員をしていました。早稲田大学が担当するのはだいたい蒲田駅周辺で、部員が等間隔に並んで走路員を務めています」
こう話すのは、今夏の東京五輪に男子400mハードル日本代表として出場した、早大競走部4年の山内大夢。
山内が1、2年生の頃の箱根駅伝といえばコロナ禍以前、約120万人とも言われる観衆が沿道で選手に声援を送っていた。日本最大級の競技会だ。選手たちの安全を守るために、沿道に目を配る黄色のジャンパーを着たスタッフの姿を見たことがある人は多いかもしれない。
トップアスリートも学生補助員に
その役割を担っているのが、予選会で敗れた大学の選手や、出場校の他ブロックの部員たち。山内のように、オリンピアンになるようなトップアスリートも、学生補助員として箱根駅伝の運営に携わることがある。
「走路員は選手に対して背中を向けて立つので、選手の走る姿は見られないんですけど、1年生の時はたまたま走路員を仕切る役割で、みんなとは反対を向いていました」
走路員の配置に目を配りながらも、二重三重の人垣に山内は圧倒されたという。
「その時に初めて箱根駅伝を生で見ました。選手が通るのは一瞬ですけど、その前後にあんなにも人で沿道が埋まるのは、他の陸上競技大会では考えられません。そのくらい箱根駅伝は注目されているんだなと、感心しました」
当時、早大1区の走者として山内の目の前を走り抜けたのが、同級生の中谷雄飛だった。山内は、中谷の走りを視界にとらえながら、胸の内でエールを送った。そして、中谷はルーキーながらトップと7秒差の区間4位と好走した。