第98回箱根駅伝(2022)BACK NUMBER
長距離以外の部員は〈箱根駅伝〉をどう見ているのか。ハードル選手・山内大夢(早大4年)の場合
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2021/12/02 11:00
山内は東京五輪400mハードルで日本勢唯一の準決勝進出。卒業後は地元の東邦銀行で競技を続ける
「自分は何をやっているんだろう」
「僕自身は1年生の時は全然ダメだったので、中谷に対して『すごいな』という思いと、チームメイトが箱根駅伝を走っているのに『自分は何をやっているんだろう』『負けていられない』という気持ちにもなりました」
1年時から活躍する同級生の姿は、山内にとって発奮材料になった。もしかしたらこんなところに、後に山内が飛躍する鍵があったのかもしれない……。
山内にとって、箱根駅伝は幼い頃から身近なものだった。
福島県出身で、両親は順天堂大学の陸上競技選手だった。近所には駒澤大学・大八木弘明監督の実家があり、山内の父・淳一さんとは同級生。大八木監督は帰省すると、山内の父を訪ねていたという。
同じ町の出身者には、駒大で活躍した安西秀幸さんもいた。山内が小学生の頃、当時、日清食品グループの選手だった安西さんから陸上教室で指導を受けたこともあった。物心ついたときから家族で箱根駅伝を観ており、山内にとって少年時代のスターは福島県出身で順大の今井正人だった。
早大はすべての部員が寝食を共にする
山内は父と同じハードルの道に進むが、ハードルを始める以前には、地域のスポーツ少年団で長距離に取り組み、地元のマラソン大会では入賞したこともあった。「そもそも陸上競技を見るのが好き」という山内は、今でもハードル以外の種目にも造詣が深い。
早大に進学してから長距離ブロックの選手とは、種目の分け隔てなく交流を持ってきた。
特に、同じ福島県出身の半澤黎斗とは高校時代から交流があり、入学当初は「友達もいない状況で、半澤だけが頼れる存在でした」と、早大競走部でチームメイトとなってからも、お互いに助け合ってきた。
また、大学によっては部内でも、長距離ブロックと他ブロックで寮が分かれていることも多いが、早大はすべてのブロックの選手が同じ寮に住み、寝食を共にしている。
「駅伝シーズンになると長距離とは部屋が分かれますが、基本はコミュニケーションを取ることを目的に、短距離、長距離、違う学年をごちゃ混ぜにして部屋割りが組まれています。競走部として一致団結できるのが、早大の強みだと思います」