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迷走のトッテナムが辿り着いたコンテという最適解 競争を促す刺激的な毎日で“甘ちゃん体質”の払拭なるか 

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粕谷秀樹

粕谷秀樹Hideki Kasuya

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posted2021/11/16 17:00

迷走のトッテナムが辿り着いたコンテという最適解 競争を促す刺激的な毎日で“甘ちゃん体質”の払拭なるか<Number Web> photograph by Getty Images

ユベントス、チェルシー、インテルと3つのクラブで成果を上げてきたコンテは、低迷するトッテナムにもタイトルをもたらせるか

「現在のプレミアリーグは、明らかに4チームが突出している」

 コンテが指す4チームというのは、リバプール、マンチェスター・シティ、チェルシー、ユナイテッドに違いない。いずれ劣らぬ強豪だ。ユナイテッドも選手の質は世界のトップ水準であり、まともな監督さえ就任すれば優勝戦線に躍り出る。

「彼らに追いつくためには、あらゆる意味でレベルアップしなければならない。トッテナムは多くのものが不足している」

 コンテは、監督就任会見で選手たちに檄を飛ばした。

「スパーズィー」と揶揄されるトッテナムの体質

 ずーっと足りないのである。トッテナムは執念や野心に欠け、長らく二番手グループに甘んじてきた。その体質はイングランドのメディアに「スパーズィー」(だらしないの意)と揶揄されてきた。

 2001年9月29日、前半を0-3で終えたユナイテッドのアレックス・ファーガソン監督(当時)がハーフタイムに、「おまえら、相手がトッテナムだってわかっているのか」と選手たちに詰め寄ると、瞬く間に5点を奪ったというエピソードまである。3点リードを守れないのだから、どれだけだらしないことか。

 そんな“甘ちゃん体質”を払拭するうえで、コンテはうってつけの人材だ。

 戦略・戦術の細部までこだわり、勝負に執着する。食生活でも妥協せず、ケチャップやマヨネース、バターを大量に使用するブラウンソース、炭酸飲料などの摂取を禁じてきた。それゆえ周囲と衝突するケースも少なくなかったが、ユベントス、チェルシー、インテルをリーグ優勝に導いてきた。

「練習も密度が濃く、毎日が刺激的だ」

 また、3バック(3-4-3や3-5-2)の使い手としてもつとに知られているため、この並びを基本形として用いるのではないだろうか。対人に強いクリスティアン・ロメロ、ダビンソン・サンチェス、エリック・ダイアーあたりは、新監督のタイプである。

 さらに、チェルシーでビクター・モーゼス、インテルでアシュリー・ヤング、イバン・ペリシッチなどを重用したように、ウイングをアウトサイドに起用する傾向が強い。

 トッテナムではルーカス・モウラ、ブライアン・ヒル、ステフェン・ベルフワインなどが、新しい才能に気づくかもしれない。

【次ページ】 ケインのモチベーションも刺激

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