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迷走のトッテナムが辿り着いたコンテという最適解 競争を促す刺激的な毎日で“甘ちゃん体質”の払拭なるか
text by
粕谷秀樹Hideki Kasuya
photograph byGetty Images
posted2021/11/16 17:00
ユベントス、チェルシー、インテルと3つのクラブで成果を上げてきたコンテは、低迷するトッテナムにもタイトルをもたらせるか
セルヒオ・レギロンのコメントに耳を傾けてみよう。
「3バックの導入によって私のポジションは左サイドバックからアウトサイドに代わった。より攻撃的な貢献が求められ、ゴール、アシスト数は昨シーズンより増えるかもしれない。しかし守備も疎かにはできず、監督からは“もっと動け、動きの質を上げろ”と何度もアドバイスされている。対戦チームの研究に使う時間も、以前の倍ぐらいに増えているんじゃないかな。練習も密度が濃く、毎日が刺激的だ」
さらにレギロンは続けた。
「新監督がやってきて全員が同じスタートラインに立ったんだ。少し前まではレギュラーと控えの差がハッキリしすぎていたけれど、いまでは選手全員が競争している。コンテ監督はとてもオープンな人だと思う」
ケインのモチベーションも刺激
主力を帯同せずヨーロッパカンファレンスリーグのフィテッセ戦を戦った直後、ハリー・ウィンクスはヌーノ監督(当時)を批判。以降、完全に干された。
コンテも厳しいタイプの監督で、チェルシーを率いていた当時は政治力を欲したダビド・ルイス、ジエゴ・コスタと激しく対立した経緯はあるが、選手起用に関してはサントほどアンフェアではなかった。
「バラバラになりかけていた」(ユーゴ・ロリス)というトッテナムは、コンテによって救われたのかもしれない。
・両アウトサイドが幅をとって相手の陣形を広げる
・センターフォワードが下りてきて相手センターバックを引きつける
・相手DFラインの背後にできたスペースに両ウイング、両アウトサイドが進入する
コンテが得意とするパターンが練習場で磨かれているに違いない。シティ移籍が叶わず、やや落ち込んでいたハリー・ケインも、世界的名将の着任によりモチベーションは著しく刺激された。
明確なパターンがなく、ケインやソン・フンミンの力に依存してきた攻撃に、コンテは命の灯をともすかもしれない。繰り返すが彼はユベントスで、チェルシーで、インテルで答えを出し続けてきた。
トッテナムをガラリと変えたとしても不思議ではない。
ノースロンドンの古豪は、素晴らしい監督を手に入れた。