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酒井高徳30歳が問いかけるJリーグと欧州サッカーの“決定的な差”「Jのインテンシティは低い」「アンドレスは究極のレベルですよ」
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/11/09 11:05
2019年夏にヴィッセル神戸に加入した酒井高徳。インタビューではチームメイト・イニエスタについても語ってくれた
酒井 いや、僕は神戸でアンドレス(イニエスタ)と一緒にやってますけど、動きながらのタッチは超うまいですよ。
スピードが落ちないまま、足からボールが離れないから、相手が慌てて出てきたところを外すことができ、ものすごく攻撃がスムーズになる。
普通ならスピードに乗りすぎてしまったと感じて減速するような場面でも、アンドレスの場合、スピードに乗ったまましっかりコントロールできる。
これが超一流なんだと、一緒にトレーニングしていて、すごく、すごく、すごく思いました。
ステイした状態の「止める・蹴る」は当たり前のようにできる。当たり前どころか呼吸をするようにやる。さらに動きながらもミスしない。これが究極のレベルです。
――風間さんの理論が一人歩きしているので補足すると、風間さん本人は「止める・蹴る・運ぶ・受ける・外す」と常々セットで語っていて、動きながらの技術もすごく重視しているんですよね。実際、風間さんのDVD、『FOOTBALL CLINIC』では動きながら「止める・蹴る」をやるメニューがたくさん出てくる。しかし、ネーミングのわかりやすさもあって、ステイした状態の「止める・蹴る」だけが一般に広まった。
酒井 そうですよね。「止める・蹴る」ってこと自体はどっちも一緒なんで。両方の状況で精度の高いプレーが必要なのは間違いありません。
ヨッチとも話した“間合いの違い”
――今年は長友佑都選手や大迫勇也選手など、ヨーロッパからたくさんの日本人選手がJリーグに戻ってきました。ただ、これまでの傾向として「(欧州からの)出戻り組」は苦戦する印象があります。どう見ていますか?
酒井 攻撃と守備では観点が違うので、分けて語るべきかなと思います。まず守備者の視点で言うと、僕は日本に戻って楽になりました。
ドイツだったら『ここで休めない』というところで、日本では休めるんですよ。ここで走られたら嫌なのに来ないのか、裏を狙わないんだ、と思うことが多々あるので。
もちろんJリーグならではの攻撃があって、コンビネーションを細かくやるのがうまくて、ボールの取り所がなく、しっかりポジションを取らないとやられるという部分はあります。その点はドイツより難しくなった。
ただ、守る側として、怖さを感じることがJリーグでは少ない。
次に攻撃者の視点で言うと、苦戦する理由になりうるのはテンポや間合いの違いだと思います。
神戸に加入したヨッチ(武藤嘉紀)とも話したんですが、ヨーロッパではトラップが乱れたときに、『あ、これは削られる』と思う瞬間があるんですよ。そういう感覚が肌に残っている。
でもJリーグだと、ボールが離れて「スカンと行かれる!」と身構えても、そこで相手が取りに来ず、見ていることが多いんです。こっちは慌てて触ったのに来てないから、ボールがずれて奪われてしまう。
そういう間合いの違いが、苦戦する一因になると思います。
長友選手の「ぬるい」発言をどう思う?
――長友選手がFC東京に復帰した際、「ぬるい」と発言して話題になりました。高徳選手もそういう雰囲気を感じたことはありますか?