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巨人“10連敗で大失速”のポイント、坂本勇人<阪神戦6-0からの交代>の真相とは? 原監督は「用兵のミス」と語ったが、実は…
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2021/11/01 17:04
今季はレギュラーシーズン117試合に出場し、打率.271だった坂本。CSでの“下剋上”にはキャプテンの活躍が必要になる
坂本は7月以降、ほぼ休みなくグラウンドに立ってきた
もともと坂本には腰痛の持病があり、疲れが溜まるとその持病が顔を出す。それでもある程度、ムリしてでもシーズン終盤にプレーを続けてきたのは例年のことだったが、腰痛がひどくなれば当然のように攻守のパフォーマンスに影響を及ぼすことも分かっている。
ましてや今年は特別だった。
5月から6月にかけて右手親指の骨折で約1カ月の戦線離脱があった。それでも6月11日の復帰以降はフル稼働。しかも今年は東京五輪の日本代表チームの一員としてほぼ全試合に出場していた。準備期間を含めて7月以降はほぼほぼ休みなくグラウンドに立ち続けていた訳である。そういう意味では五輪からチームに戻った8月半ばから10月末までの間で、どこでどう坂本に休養を与えるかは、チームのリスクマネジメントとしては当然、考えておかなければならないことだったのである。
そこであの阪神戦だった。
中盤までに6点差がついた。となれば休養を与えるために、交代の決断は選択肢としては当然、あって然るべきだった。むしろ決断できずにズルズルと坂本を使い続ければ、いつ次に休養を与えるチャンスが巡ってくるかもわからない。
原監督の決断自体は間違いではない
この坂本の交代は、原監督が語るように結果的には「用兵のミス」だったかもしれない。ただ、その決断自体は間違いではない。
ただたまたま休ませたときにこんな事態が勃発したことで、改めてその存在の大きさがクローズアップされることになった訳である。
坂本クラスの選手になれば、結果云々はその選手を信頼して、その選手に委ねるしかない。そうして結果を委ねるためにあるべきベンチワークとは、その力をどう最大効率で発揮させられる環境を作れるかということだ。
今季の坂本は故障での戦線離脱もあり、決して調子が良かったわけではない。それでもケガから復帰後は3番を任され、そこが打線のキーポイントになった。チャンスで坂本に回せば何とかしてくれるという信頼感。そしてチームが苦境のときに、若い選手たちがその背中を見て、実際に何とか活路を開く安打を放ってきたのも坂本だった。
だが、その坂本が何とかできなくなるとチームは突然、機能不全に陥ってしまう。