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巨人“10連敗で大失速”のポイント、坂本勇人<阪神戦6-0からの交代>の真相とは? 原監督は「用兵のミス」と語ったが、実は…
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byNanae Suzuki
posted2021/11/01 17:04
今季はレギュラーシーズン117試合に出場し、打率.271だった坂本。CSでの“下剋上”にはキャプテンの活躍が必要になる
中でも大きかったのが坂本の不振だった
巨人打線の最大の売りはこの3人の誰かが不調で打てなくても、残りの2人が打線を支えて得点力を落とさないことにある。しかしその3人が3人、揃いも揃って打てなかったのだから、チームの基本コンセプトが崩れてしまうのも仕方ない。
そして中でも大きかったのが坂本の不振だった。
改めて巨人というチームに於ける坂本の存在感を痛感させられたのが、9月5日の阪神戦だった。
優勝戦線への生き残りをかけた3連戦は阪神に連敗して絶体絶命へと追い込まれたまま最後の3戦目を迎えた。
この試合は5回に岡本の3ランが飛び出し6対0と圧勝ムードとなっていた。そこで原辰徳監督が6回裏の守備から坂本を交代させて、ショートに若林晃弘内野手を起用した。
しかしここから悪夢が始まる。
「今日は私自身の用兵のミスというか」
直後の6回の阪神の攻撃。無死三塁からジェリー・サンズ外野手のゴロを若林がファンブル。これをきっかけにこの回4点を失い2点差とされ、続く7回には若林を一塁に回して広岡大志内野手を遊撃に起用したが、無死一塁から今度はその広岡が併殺を焦って二塁に悪送球。これをきっかけに2点を失い、巨人は完全な勝ちゲームを引き分けとされてしまったのである。
「今日は私自身の用兵のミスというか。そういうものが同点につながったのかなと深く反省していますね」
試合後の指揮官がこう語ったように、坂本の交代が試合の流れを完全に変えてしまったことは確かで、さらにはこの3連戦から巨人の終盤の大失速劇が始まってもいる。
そういう意味では結果的に巨人の優勝がなくなったターニングポイントとなった試合であり、用兵、采配だったともいえる。
ただ、その一方でチームの内情を知ると事はそう単純ではないと思えるのだ。というのもあの時点で坂本をどう休ませるかというのは、チームにとっては終盤の戦いを睨んだ大きな課題だったからである。