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「もう終わった」と思われていたレロイ・サネが完全復活へ 2人の指揮官は天才をどのように蘇らせたのか? 

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中野吉之伴

中野吉之伴Kichinosuke Nakano

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posted2021/11/01 17:00

「もう終わった」と思われていたレロイ・サネが完全復活へ 2人の指揮官は天才をどのように蘇らせたのか?<Number Web> photograph by Getty Images

昨季は怪我の影響もあり満足のいくパフォーマンスを見せられなかったサネだが、今季はハイパフォーマンスでバイエルンを牽引している

ファンもサネの変化を受け止めている

 その後アルメニア、アイスランド、ルーマニア戦では重荷を下ろしたかのような軽やかなプレーでファンを魅了。鋭いドリブルとクロス、ゴールへ向かったアクション。ボールを持つと何をするかわからないワクワクが随所に見られた。

 フリックは、手綱を締めることも忘れない。大量リードした試合でボールロストした際、足を止めたサネに猛烈な叱責を送る。するとサネは、弾かれたように走り出した。

「軽やかな動きを何度も見せてくれたのが印象的だった。自分から動く姿を嬉しく思う」

 ボールを失った後の対応のまずさを批判されていた姿はもうない。最近の代表、そしてバイエルンでは、驚くほどボール奪取頻度が高いのだ。フィジカルコンタクトを厭わず、身体をなげうって何度も守備に汗をかく。

 ファンも、そんなサネの変化をしっかり受け止めている。大拍手が起きるのは、華麗なドリブルやパスの瞬間ではない。ボールロスト後も足を止めずにダッシュで戻り、スライディングでボールを奪い返したときだ。

 その心意気に、割れんばかりの声援が送られる。

確かだったナーゲルスマンの目

 ナーゲルスマンは左サイドにこだわらず、ピッチ中央寄りにポジションを取り、そこでパスを受けることでゴールへ直結するプレーも要求する。

「指導者は選手が居心地良くプレーできる場所、ポテンシャルを発揮できるポジションを見出そうとしなければならない。レロイは、ピッチ上のどこでも重要な役割を示すことができるクオリティを持っている」

 ナーゲルスマンの目は確かだった。サネは、さらに輝きを増している。

 ロベルト・レバンドフスキやトーマス・ミュラーとポジションチェンジしながら、常にゴールを狙い続けるようになった。ファンが選ぶ9月の最優秀選手に選ばれ、10月20日のCLグループリーグ、ベンフィカ戦では2ゴール1アシストの大活躍を見せた。

「コーチングチームが素晴らしい準備をしてくれた。我慢強くゲームをコントロールすることが大事だったけど、それを最後までやり通すことができた」

 ベンフィカ戦後、サネの表情にはサッカーを純粋に楽しむ子どものような笑顔が浮かび上がっていた。もう大丈夫。サネは間違いなく復活した。

 最後に、印象的なナーゲルスマンの言葉を紹介したい。サネがどん底に落ち込んでいた頃、次のようにファンへ訴えていた。

「彼にシンプルにサッカーをさせてやってくれ。レロイを、レロイらしくさせてくれ」

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