セリエA ダイレクト・レポートBACK NUMBER
イタリア中の母たちが頬を緩める“驚くほど行儀の良い出来杉君” 「2世代表」フェデリコ・キエーザが放つ異質なオーラ
posted2021/11/02 11:00
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
セリエAで活躍する「2世プレーヤー」たちのなかでも、ユベントスのフェデリコ・キエーザは頭一つ抜き出た存在だろう。
今夏のEURO2020において決定力のあるウイングとして印象的な2ゴールをあげ、優勝に貢献したのは記憶に新しい。キエーザは、入団2年目の名門ユーベでも主力として定着。リーグ戦での順位挽回(11試合を終えて4勝3分4敗の9位)とCLグループリーグ突破のキーマンとして期待がかかる。目覚ましい急成長により近いうちに市場価値は1億ユーロ(約132億円)に届くだろうと、もっぱらの評判だ。
「タトゥーは自分に必要ありません」
父エンリコは、パルマ時代の1999年にUEFA杯と大会得点王を獲った元イタリア代表FW。名ストライカーの息子フェデリコは、フィレンツェで過ごした子供時代から名の知られた存在だった。
ナショナル・トレーニングセンターのある郊外の小さなクラブに5歳から通い始めて、10歳でフィオレンティーナの育成部門に入団。以来ビオラひとすじ。2016年夏、パウロ・ソウザ監督(当時)に抜擢され、ユベントスとのセリエA開幕戦に18歳で先発デビューを果たした。
どんな新人であっても、セリエAの公式戦出場に至るだけで狭き門をくぐり抜けた才能には違いないのだが、デビュー間もない頃からキエーザには凡百の選手とは一線を画す、異質なところがあった。
「タトゥーは自分に必要ありません。ああいう流行は嫌いです」
「初給料で買ったのはマニュアルのアウディA1(コンパクトカー)です。大きくて、ハイパワーな車は要りません」
「大学で物理学を勉強したいです」
デビュー間もない頃のインタビューを読むと新人らしく慎ましい言葉が並ぶ。メディア慣れしていないぶんを差し引いても、謙虚すぎると感じるほどだ。
スター選手の子息にありがちな増長も、甘ったれた物言いもない。父と同じ道を選んだからにはギラギラした功名心があってもよさそうなものだが、それも感じさせない。
驚くほど行儀の良い出来杉君。
イタリア風にいうと“石鹸と水でできた好青年”というやつだ。