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《五輪兼任とA代表専任監督どっちが最善か》問題…森保ジャパンと韓国代表の東京五輪→10月シリーズまでを比較してみた
text by
吉崎エイジーニョ“Eijinho”Yoshizaki
photograph byTakuya Kaneko/JMPA
posted2021/10/31 11:00
10月シリーズを1勝1敗でW杯ストレートインに望みをつないだ状況の森保ジャパン。韓国代表はどうなっている?
「ソン・フンミンを守ることが韓国サッカー界の……」
「今年だけでも51試合、正確には3996分プレーしている」
キム監督は何分かまでを正確に言い当てたのだ。その時すでにハムストリングに違和感があったソンを「怪我をさせてはいけない」と。そして「ソンを守ることが韓国サッカー界の財産を守ること」とした。その会見の場では欧州と代表の往来で酷使され、膝の負傷により30代前半で引退を余儀なくされたパク・チソンの存在までも挙げたのだった。
ソンを東京五輪に呼ぶための答えは簡単なことで「W杯2次予選を休ませればよかった」。韓国代表が2次予選を5勝1分、総得点22失点1で終えたなか、ソンはほぼ全試合に出場していた。
さらに東京五輪での韓国は大会直前でオーバーエイジ選手が合流したがために、「攻守ともに組み直し」という事態に陥った。守備ラインに至っては、中心と期待していたCBキム・ミンジェ(フェネルバフチェ/トルコ)が当時の所属クラブ北京国安が招集に応じず、大会直前に出場できなくなった。結果、代わりの選手が日本への出発直前にチーム合流するほどだった。
韓国はA代表と五輪代表、双方の監督がそれぞれの結果を求めるがために、五輪直前に“詰んだ”かたちになった。
日本優勢は8月6日の試合前まで
それと比較すると、森保一監督が取り組んできた「A代表、年代別代表のラージグループからの選手選抜」が合理的に映った。
吉田麻也らオーバーエイジ選手は「新たに選抜した」のではなく、A代表から移ってきたかのようにスムーズに浸透していた。東京五輪直前にA代表のジャマイカとの親善試合が中止になったが、この際には即座に五輪代表との「兄弟対決」が組めた。これは韓国に言わせれば「A代表監督が嫌がり、簡単なマッチメイキングではない」のだ。仮に内容や結果が悪ければ大きく評価を下げるものだと。
ただし、優勢だったのは8月6日の試合前までだ。メキシコとの3位決定戦が行われる前まで。
日本が銅メダルという結果を得られなかった後、再び一気に韓国に流れが傾いている。
兼任監督であるがゆえの硬直性
9月以降の日本の失速は改めて記すまでもない。
日本側は「東京五輪からの悪い流れがあるのでは?」という見方も出来るのではないか。特に注視すべきは批判の多い「采配」についてだ。森保監督はゲームプランを変えられないのではないか、チーム内での序列が決まっているのではないか。交代が適切ではない。そもそも「戦術的に何がしたいのか不明確」。そういった声も聞く。
これが「五輪で結果が出なかったがための思考の硬直化」なのかどうか。ついに先日、オーストラリア戦でフォーメーションとメンバーを大胆に変更し、結果を残したのだが。
その点、韓国は東京五輪の大きな影響もなくチーム作りが続く。