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「勝てるところまできていたので…」SO松田力也の悔しさは本気の証 〈世界3位に善戦〉も日本代表に欠けていた“規律”とは
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/10/25 17:01
試合をコントロールし、オーストラリアとの接戦を演出した松田
ポジティブな評価もしている。「キックとランを使って速いラグビーができたときは、すごくいい部分がたくさんあった」と話すが、「ただ、ペナルティ17回とイエローカードが出てしまうと」と表情を曇らせるのだ。後半途中にレメキがイエローカードを受けて一時退場となり、その間にトライを奪われている。他でもない自分たちで自分たちを追い詰めたことが、敗戦を招いたとJJは言っているのだ。
逆説的に言えば、自分たち次第で勝つことのできた一戦である。接戦を評価する質問を受けた稲垣啓太は、「負けたので全然いいゲームではないんですけどね」とやんわりと否定し、「それは選手全員が思っているはずですし、負けたことをしっかり受け止めています。勝つために準備をしていたので、いいゲームではなかったと思います」と続けた。
もはや目標は善戦ではなく勝ち切ること
31歳のプロップの意見に、松田も同意する。
「3位のオーストラリア相手にやりあえたことで、自分たちのプレーを自信を持ってやれば十分に戦える試合だったと思いますし、ホントに勝てるところまできていたのですごく悔しいです」
戦いのレベルが上がるほど、ディテールが勝敗を分ける。細部にこだわり、突き詰め、相手よりミスを減らしたチームが、最終的に勝利をつかむのだ。稲垣が言う。
「反則が多かったですね。最低でもひとケタに抑えないと、難しいと思います。ホントにシンプルな問題なんですけど、シンプルゆえに負けているということなので、もっとディシプリンを選手全員に刷り込んでいかないといけないですね」
ティア1と呼ばれる世界のトップ・オブ・トップが相手でも、自分たちのストロングポイントを発揮すれば互角の勝負に持ち込める。JJが率いる日本は、この試合を善戦とは捉えていない。W杯でベスト8の高みを見たチームの視座は、ファンよりも、メディアよりも、高い。
強豪に何とかして食い下がるのではなく、勝ち切るために何ができるのか。何をしなければいけないのか。11月のヨーロッパツアーで、我々はジャパンの本気度に触れることになるはずだ。
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