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「勝てるところまできていたので…」SO松田力也の悔しさは本気の証 〈世界3位に善戦〉も日本代表に欠けていた“規律”とは
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byKiichi Matsumoto
posted2021/10/25 17:01
試合をコントロールし、オーストラリアとの接戦を演出した松田
チームを活性化する田村と松田のポジション争い
15年と19年のW杯メンバーである田村は、今回の日本代表でリーチマイケルに次ぐ66キャップを誇る。19年のW杯では田村が全5試合に先発し、松田は4試合に途中出場した。
コロナ禍で止まっていたジャパンの強化の時計は、今春に再び動き出している。6月にブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ、7月にアイルランドと対戦し、いずれの試合でも田村がスタンドオフで先発した。松田は2試合ともメンバー入りしたが、アイルランド戦の途中出場のみに終わっている。
11月にはヨーロッパへ遠征し、アイルランド、ポルトガル、スコットランドと対戦する。松田は今回のオーストラリア戦で爪痕を残し、定位置奪取への足掛かりをつかむ必要があった。
「ずっと先発出場がないなかで、自分自身は待つしかない状況で、チャンスが来ればしっかりつかめるように準備はしてきました。トップリーグの期間も含めてやってきたので、自信を持ってプレーしようと思っていましたし、周りのみんなに支えられてプレーできたので、そこは自信にしてやっていきたいです。いいコミュニケーションをすることで、いいゲームコントロールができたと思うので、チームは負けたけれどまだまだ伸びしろはあるし、改善点も含めてこれからもっと成長したいという思いでいます」
JJことジョセフHCも、松田のパフォーマンスには及第点を与えている。「バランス的にすごく良かったと思う」と切り出し、賞賛の言葉を並べた。
「相手のラインへボールを持って仕掛けたり、クロスキックはすごく象徴的で、彼の成長を見ることができた。パフォーマンスはすごく良かったと思う」
32歳の田村が先行し、27歳の松田が追いかけるスタンドオフの序列は、11月の欧州ツアーで変わっていくのか。ふたりの競争はチームの活性化にもつながる。JJは嬉しい悩みを抱えることになったはずだ。
ジョセフHCが指摘した“規律”という改善点
松田のプレーを評価したJJも、試合の内容について問われると言葉選びが変わっていく。
後半も追いかける展開のなかで、74分に田村のペナルティゴールで23対27と4点差に詰め寄り、1トライで逆転できる状況を生み出した。ところが78分、自陣でのペナルティをきっかけにトライを奪われてしまう。指揮官はペナルティの多さを指摘した。
「この試合の改善点のひとつが規律だ。17回(公式記録では14回)のペナルティがあると、南アフリカのような強豪を下していたオーストラリアに勝つのは難しい。ミスが起こったタイミングや時間も、結果に影響を及ぼした」