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「ドラ1確実か」今永昇太(DeNA)のような社会人左腕&「佐々木朗希目指せる」193cm高校生右腕も…2021年ドラフト目玉候補《投手ベスト3》
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/03 11:03
ドラフト目玉ベスト3 投手編(2)関東一高・市川祐(183cm85kg・右投右打)
やはり、「左腕」というのは、それ自体、大きなアドバンテージだ。絶対数が少ないから必要とされやすいし、現状、左打者に実力者が多い今のプロ球界だから、さらに必要とされる。
西日本工業大・隅田知一郎投手を春先のリーグ戦で初めて見た時は、すぐに「今永昇太(DeNA)」が重なって見えた。
左腕にありがちなアンバランスやぎこちない身のこなしが一切なく、スムースな連動からリリースの瞬間に全身のパワーを一点に集中させる技術に感心したものだ。
145キロ前後を普通のことのように続け、スライダー、カットボールをベースの両サイドにきっちりきめるコントロールに驚いた。
“即戦力系左腕”がいないため「重複指名」もあり得る
あとは、レベルの高い相手を向こうに回した大舞台で、果たしてどうなんだ?
実証のチャンスは6月にやってきた。
チームを「全国」に牽引した全日本大学野球選手権。優勝候補の上武大学を相手に、真っ向勝負に出た隅田知一郎。勝った、負けた……以上に、痛快、さわやかな投げっぷりが胸に刺さった。
「今日は全国だから!」みたいな変な気負いやスペシャル感がない。いつも九州のリーグ戦で投げているそのまんまを再現すればいい……そんな実直なピッチングだ。
スピード感抜群の腕の振りから、145キロ前後の速球とスライダー。そのスライダーの沈みが激しく、打者のタイミングを外す。
ピンチの場面でも、打席の打者から目を外さない。一歩も引かず、真っ正面から立ち向かっている。
逆境で、人間の本性がわかる。ダグアウトの顔色をうかがわないのは、自分で自分を作ってきたやつだからだ。誰かに作ってもらったような“人工的”な匂いがしない。
今っぽく言えば「間違いないやつ」だ。
首を使ったややこしい一塁けん制が出来て、左腕に意外と多い左打者に対する“苦手感”もない。つまり、左打者の内角も突ける。
「隅田は自分で練習できて、自分から研究できる。私が教えたことは特にない」と、西日本工業大・武田啓監督がおっしゃっていたことを、後から人づてに聞いた。
上武大との試合。やはりドラフト上位候補と評されるブライト健太外野手からレフト中段に放り込まれた一撃から、もしかしたら、飛びやすい球質かも……唯一の心配はそこだが、低めのコントロールと打者のタイミングを外す意識さえ確かに持てば、広島・栗林良吏がいまだ(10月1日現在)本塁打を1本も喫していないように、危険を回避することは十分可能だ。
1位指名は確実、即戦力系左腕が見当たらない今の状況なら、「重複」まである快腕と見ている。(続く)
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