マスクの窓から野球を見ればBACK NUMBER
巨人・坂本勇人を思い出す188cm社会人ショートとは? 慶応大のスラッガーも…2021年ドラフト目玉候補《内野手ベスト3》は?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph bySankei Shimbun
posted2021/10/03 11:04
ドラフト目玉ベスト3 内野手編(2)セガサミー・中川智裕遊撃手(188cm86kg・右投右打)
内野手編(3)慶應大・正木智也選手(182cm90kg・右投右打)
慶應義塾大・正木智也選手(182cm90kg・右投右打・慶應義塾高)は、今ドラフト有数のバットマンでもある。
今年の春は一塁を守っていたが、この夏のオープン戦からは、ポジションの可能性を広げるために、外野手として出場している(大学2、3年時も外野手で出場)。
ただ「外野手編」で、3人の枠が埋まっているのと、私自身が正木選手の「内野手」としての隙のない守りに感心したことが何度もあるので、この「内野手編」で取り上げたい。
「慶應の正木」といえば、一級品のバッティング技術と長打力ばかりがクローズアップされるが、彼のディフェンスの誠実さこそ、もっと称賛されてよい。
実戦での正木内野手の「集中力」はすばらしい。たとえば、バント処理だ。
投手が拾って一塁送球、打者走者を刺して、ランナー二塁。この場面で正木選手は、常に走者の姿を目の中に置いたまま、ポジションに戻る。
打者走者を刺した段階で、トボトボと下を向いてポジションに戻る野手がほとんどの中で、正木選手の守りには、そうした「やれやれ感」を漂わす瞬間がない。
インプレーが解けたあとも、相手ベンチ、味方ベンチ、塁上のランナーの様子、他の野手のポジショニング、風の変化、太陽の位置…いつもどこかを見ながら動く。
野球における「集中力」とは「一点凝視」ではなく、いつもどこかを見ていること。そのことを、正木智也選手の守備ワークから教わったように思う。
さて、正木選手を有名にした強打ぶりだが、本人もバッティングのモットーとして挙げているように、「インサイドアウトのスイング」がその身上だろう。
インサイドアウト……つまり右打者なら、右ヒジをおへその前にグイと入れてくるようにしてバットを引っ張り、バットヘッドを体に近い位置で走らせて一気に振り抜く。そういう打法だ。
投球を長く見て、見極めてひっぱたく……だから、選球眼が利いて、痛烈な打球を生む。
プロ仕様の「基本」を獲得しようとする旺盛な意識。自分から納得を得られるまで練習できるのも、強みだ。凡打にも決して手を抜いた走り方をしないひたむきなプレースタイル。
将来のチームリーダー、ひいては、球界全体のリーダーとしての像すら浮かんでくるようだ。(続く)