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「このままでは資金がショートする」初優勝の裏で、千葉ジェッツ社長が明かした“リアルな経営状況”と本音…目指すべき「市民球団」とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by©CHIBA JETS FUNABASHI/PHOTO:AtsushiSasaki
posted2021/09/14 17:01
2020-21シーズンを優勝した千葉ジェッツ。コロナ禍でのチーム運営状況について、社長の田村氏が語った
コロナ前の2018-19シーズン:5204人
入場制限のあった昨シーズン(2020-21シーズン):2121人
(※2019-20シーズンは全日程のおよそ3分の1を残して打ち切りになったため、比較対象から除外する。以下同じ)
半分以下の、約41%になってしまったのだ。その影響を受けた個別の分野での収益を比較すると以下のようになる。
飲食収入:約14%(約5264万円減少)
チケット収入:約62%(約1億5425万円減少 ※コロナ禍の影響で消滅試合となった2試合分も含む)
MD収入(おもにグッズ収入):約69%(約5275万円減少)
飲食収入が激減したのは食事の制限があったり、シーズンの大半でアルコールの販売ができなかった影響があったから。これは避けようがなかった。
グッズ収入はオンラインでの売り上げが増加
一方で、チケットとMD収入については、観客動員の減少分よりも少ない下げ幅でおさまった。もちろん理由がある。
チケットについては、対戦カードや試合日程などによる需要の変化と連動して値段が変動するダイナミックプライシングを導入した成果があった。
MD収入については、EC、いわゆるオンラインでの売上が以前よりも伸びたおかげだ。社長の田村はこう話す。
「会場でグッズなどを買っていただくことがほとんどだったところから、ECの売り上げが増えた意味はあるでしょうし、コロナが収束したあとにも高い水準を維持できる可能性を秘めているのかなと考えています」
ただ、注目すべきはそこではない。ジェッツがミクシィのグループ会社になってからおよそ2年。田村が社長に就任してからおよそ1年2カ月。その間に手がけてきた多くの改革についてだ。
その大半は外部から見えづらく、即効性があるものでもない。だが、100年続くクラブの未来にむけては意味のある改革だと田村は考えている。
今回は改革について、大きく3つに分けて見ていく。
1)ベンチャー的経営モデルから、一部上場企業の経営モデルへ
試合の演出のために高額な設備を導入する。チームのタイトル獲得のために、新戦力を補強する。
これがジェッツが行ってきた経営モデルだ。これまで強気に動いていたのには理由があった。
「以前は、『次の年には売り上げが伸びる』と、先行投資という形でガンガン進んでいました。しかし、コロナ禍で色々な分野で収入にストップがかかったことで、見込んでいた収入を確保できず、コストだけが膨らんでいきました」