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「このままでは資金がショートする」初優勝の裏で、千葉ジェッツ社長が明かした“リアルな経営状況”と本音…目指すべき「市民球団」とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by©CHIBA JETS FUNABASHI/PHOTO:AtsushiSasaki
posted2021/09/14 17:01
2020-21シーズンを優勝した千葉ジェッツ。コロナ禍でのチーム運営状況について、社長の田村氏が語った
社員同士の業務の依頼も全てシステムに入力して、進める形にした。例えば、Aという部署が、とあるサービスを顧客に届けるために、社内のBという部署に業務を依頼する。しかし、Bの部署は他の業務も抱えているから、その依頼を失念してしまう。そして、サービス提供日間近になって、そんな事態が発覚する。どんな組織でも、よく起こることだ。
「そうした問題は社内の依頼システムに記録を残すことで、格段に減ります。また、ある業務で問題が起きても、スタートからの流れを、システムを通して後から追うことができます。そうすると、問題の原因がどこにあったのかを検証し、反省したり、改善できるんですよ。だから、組織として同じような失敗をするのを防ぎやすくなります」
表面的に見ればジェッツ社内の改善なのだが、最大の目的は社員の仕事の先で待っている人たちのことを考えたからだという。
「社内の問題からサービスのクオリティーが下がったり、トラブルを起こしてしまうと、最終的に迷惑をおかけするのはお客様です。我々にとっては、ファンやブースター、あるいはパートナー(スポンサー)のみなさま。システムの導入によって社員が最初の時点でやることが増えたのですが、正確性は上がってきています。将来的にはそれが提供するサービスの満足度向上につながると考えています」
3)数十年先に評価されるような、未来への活動
例えば、千葉県の子どもたちに子どもの頃からバスケットボールやスポーツに興味を持ってもらうために、ジェッツは幼稚園・保育園に幼児用バスケットゴールの寄贈を続けている。すでに船橋市や木更津市などに寄贈し、今後は千葉市の保育園に贈ることになる。あるいは、スポンサー企業と組んで行なう、試合日に駅からアリーナまでのゴミを拾っていくクリーン活動もそうだ。
それらは持続可能な、より良い社会を作るためのSDGsの活動に数えられるものだ。以前から「JETS ASSIST」という形で取り組んできたが、田村が社長に就任してから、活動を加速させている。
経営が苦しいにもかかわらず、そうした活動への取り組みと投資を惜しまないのには理由があるという。
「利益が出るから、公共性が高いことをやるべきだと考えているのではありません。その逆で、バスケットボールクラブとして社会から求められているからこそ、取り組むべきだと考えています。ファンやブースター、地域のみなさんに支えられてジェッツは日本一のクラブになったわけですから」
収支の見える化や社内の構造改革と比べ、こうした活動の成果が出るのには時間がかかる。むしろ、正しく評価されるのは数十年後、田村が社長の座を離れた後かもしれないのだが……。
「長い年月をかけないと、スポーツクラブは発展していかないので。Jリーグだって30年近くかけて、今があります。Bリーグは誕生して6年目。現在取り組んでいるが10年後や20年後に、ようやく花開くような状況は普通のことだと考えています。むしろ、短期間で成果を感じるのは難しいことだからこそ、早い段階から取り組んでいこうと考えていますね」