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「このままでは資金がショートする」初優勝の裏で、千葉ジェッツ社長が明かした“リアルな経営状況”と本音…目指すべき「市民球団」とは?
text by
ミムラユウスケYusuke Mimura
photograph by©CHIBA JETS FUNABASHI/PHOTO:AtsushiSasaki
posted2021/09/14 17:01
2020-21シーズンを優勝した千葉ジェッツ。コロナ禍でのチーム運営状況について、社長の田村氏が語った
「市民球団」とは何か?
このような改革を行うのはなぜか。それは理想とする「市民球団」になるために必要だったからだ。
「『市民球団』という言葉がありますが、世の中で『市民球団』と認知されているチームでも、実は大株主がいて、責任企業が存在しているケースがほとんどです。だから、『市民球団』かどうかは、イメージから判断されている側面が大きいのではないでしょうか。
私の考えるその定義の一つが、黒字化して単独で運営できる状態にあるクラブであることです」
そんな「市民球団」を目指す段階で、コロナ禍に巻き込まれた。だからグループ企業であるミクシィに支援を求めたのだが、ミクシィの存在はセーフティーネットのようなもので、将来的には単独での安定経営を明確な目標にしている。
そして、もう一つの定義を語るとき、田村は力を込める。
「それは地域やファンのみなさんに『自分たちが支えているクラブだから応援しよう』と思ってもらえる存在であることです。『千葉県をバスケットボール王国にする』というのが僕らの掲げているビジョンで、その実現のためには地域のみなさまに胸を張って誇ってもらえるための活動をしないといけないんです」
例えば、今シーズンからジェッツのロゴが新しくなった。従来のものよりもシンプルで、洗練されたデザインにしたもので、アパレルやグッズなどに転用がしやすくなる。イタリアの名門サッカークラブのユベントスが長い歴史のなかで定着してきたエンブレムを変更して大きな成果をあげているが、そういったトレンドにも合致した取り組みである。
ただ、そうしたわかりやすい変化はごく一部にすぎない。むしろ、社長に就任してから力を注いできたのは、外部から見えづらい組織改革や、時間のかかる取り組みだった。
一方で、田村が社長に就任したあとも決して手を加えなかったことがある。それはジェッツ創設時からの理念だ。
「ジェッツを取り巻く全ての人たちとともにハッピーになる」
全てはその理念を実現させるための取り組みなのである。