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〈銀メダル車いすバスケのスピードスター〉鳥海連志22歳が『ローポインターはサポート役』を覆せた理由「でかい壁があれば、よし、と思う」 

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松原孝臣

松原孝臣Takaomi Matsubara

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posted2021/09/07 11:05

〈銀メダル車いすバスケのスピードスター〉鳥海連志22歳が『ローポインターはサポート役』を覆せた理由「でかい壁があれば、よし、と思う」<Number Web> photograph by Getty Images

東京パラリンピック決勝のアメリカ戦にて、相手をかわしてシュートを放つ鳥海連志

 車いすバスケットボールは、障害の度合いに応じて、1・0から4・5まで、0・5刻みで選手に持ち点が設定される。点数が低いほど障害が重いことを表す。そしてコートに立つ5名の合計は14・0以下にすることが定められている。チーム間の公平性を保つためだ。そして4・0以上の「ハイポインター」がエースとして得点源となり、点数の低い「ローポインター」はそのサポート的な役目を担うことが多いとされてきた。

 だが、2・5と障害が重い方に入る鳥海は、相手のハイポインター相手でもディフェンスで伍して戦った。すると自チームのハイポインターにゆとりが生まれる。ディフェンスに限らず、オフェンスでも持ち点以上の活躍を見せたのは記録が示している。

 従来のイメージを覆す活躍でチームの躍進に貢献したのだ。

もともとはテニスに打ち込んでいた

 日本代表入りは2015年のこと。高校1年生、15歳だった。30代、40代の選手もいる中、唯一の十代での選出で注目を集めた。異例とも言われた。

 中学1年生でバスケットボールを始めたが、テニスに打ち込んでいたから、何度かあった誘いを断っていた。それでも一度見学してみて心が動かされた。しかしいざ始めると、チームにいる大人の人たちのようにプレーできないのが悔しかった。「絶対にこの人たちより、上手くなってやる」と誓った。

「上手くなりたい、その一心で取り組んできた。それだけです」

 やがて日本代表候補合宿に呼ばれた。レベルの違いに「自分はここに来てよかったんだろうか」と不安を抱きつつ、別の思いも湧いたと言う。

「この選手達を抜いていかないといけないんだ。この人達がまだ現役のうちに、絶対に抜きたい、と思いました」

 海外のチームと対戦すると、リーチの長さなど体格の違いを思い知らされた。

「この人たちより、もっと上手くなりたい。もっといい選手になりたい」

 そう決意した。いつも、自分よりもレベルの高い選手に出会うたび、超えていきたいと思った。

【次ページ】 「この5年間が報われました」

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