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大谷翔平「176号」が松井秀喜の苦しみと重なった…「ゴロキング」と揶揄されたメジャー1年目に打ち明けた「本塁打を打てなかった本当の理由」
posted2024/04/25 17:06
text by
笹田幸嗣Koji Sasada
photograph by
JIJI PRESS
松井秀喜が持っていた日本人本塁打記録を大谷翔平が塗り替えた。足掛け10年、4970打席で175本塁打を放った松井に対し大谷は7年、2979打席で176号に到達した。量産速度に大谷の凄みが表れている。
過去6年、大谷は単年平均で30本塁打弱を記録してきた。今後の10年契約を全うすれば「Five Hundred Club」=500本塁打達成も夢ではない。二刀流、MVP、本塁打王等々。これまでも数多くの夢を我々に与えてくれたことを考えれば、期待は膨らむばかりだ。
松井と大谷。日本を代表するパワーヒッターのふたりにはさまざまな違いがあると感じるが、絶対的な共通項がある。
『チームの勝利のために自分が今、何をすべきか』
野球選手として当たり前のことと思うかもしれないが、実際のところ実践できていない選手も多くいる。頭の中では考えられても結果に繋げられない。だが、日本の誇るこのふたりは完璧だ。その上で松井と大谷は『175』という数字をメジャーでクリアした。そこを称えたい。
「ゴロキング」と揶揄されたメジャー1年目
03年。ヤンキース移籍1年目の松井は日本からやってきた『本塁打王・ゴジラ』として、全米で最も重圧が高く、目の肥えたファン、記者が集まるニューヨークで期待を集めていた。
だが開幕2カ月を経ても成績が上向かない。ツーシーム、シンカーを代表とする「動くボール」全盛の時代に外角へ逃げながら沈んでいく投球にバット軌道があわなかった。
打率は.250ほどに低迷し、本塁打は5月を終わり248打席でわずか3本。全米屈指の名門紙「ニューヨーク・タイムズ」の番記者、タイラー・ケプナー氏は紙面で『Ground Ball King』(ゴロキング)の見出しで揶揄した。ケプナー記者に問うとシビアに答えた。
「グランドアウト(内野ゴロ)が想像以上に多いからね」
実のところ、筆者も失望しかけていた。
95年の野茂英雄に始まり、日本を代表し海を渡った選手は、1年目から日本時代同様の成績を残していた。00年、マリナーズの佐々木主浩はクローザーとして37セーブを挙げ新人王に輝き、01年のイチローは打率.350で首位打者、最多安打、盗塁王、ゴールドグラブ賞も受賞しMVPにまで輝いた。日本で年間最多50本塁打を放ち圧倒的なパワーを誇ってきた松井にも同じ姿を期待していたからだ。