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「アメリカにひと泡ふかせたい」女子バスケ銀で蘇った23年前の言葉…萩原美樹子が語る日本代表のアイデンティティとは?
posted2021/08/25 17:01
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph by
Kaoru Watanabe/JMPA
「日本のバスケットボールでアメリカにひと泡ふかせたい」
先日、バスケットボール女子日本代表が東京オリンピックで銀メダルを取ったとき、ふと、23年前に聞いた言葉が蘇ってきた。
これを口にしたのは、当時WNBAフェニックス・マーキュリーに所属していた萩原美樹子。記憶頼りなので正確な言い回しではないが、そんなニュアンスの言葉だった。
萩原は、1996年のアトランタ五輪に出場し、準々決勝のアメリカ戦で22得点(3ポイントシュート5本中4本成功)と活躍。それが認められ、翌年アメリカで新設された女子バスケットボールのプロリーグ、WNBAに加入した。日本人WNBA選手第1号選手だ。
しかし、アメリカ的なバスケットボール価値観が強いWNBAのなかで、日本で磨いてきた実力を出しきれず、自分の持ち味を生かした起用方法をしてもらえず、もどかしさとフラストレーションのなかで、98年にマーキュリーを退団し、WNBAを離れた。その、帰国前の言葉だ。
「言われて思い出しました」
東京オリンピックの日本代表は、決勝でアメリカに敗れたのだから、そういう意味では決してアメリカに「ひと泡ふかせる」ことができたわけではない。それでも、決勝まで上りつめる間に、アメリカを含めた世界に日本のバスケットボールの魅力と強さは十分に伝わっていた。それがわかっていたから、アメリカは本気になって日本対策をしてきた。その本気の相手に、75-90の戦いをした。間違いなく爪痕を残したと感じたから、当時の萩原の言葉を思い出したのだった。
オリンピック後、萩原と話す機会があったので、そのことを伝えると「今、言われて思い出しました」と笑った。笑いながら、萩原にも当時の記憶と悔しさが蘇ってきたようだった。
「まさにそうです。マーキュリーを去るときに、『ここに村上と加藤がいたら』って、私は本当に思ったんですよね」