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「清宮の外れドラ1」の共通点… 安田尚憲は村上宗隆に続けるか? “阪神が1勝分ハンデなセ首位争い”も注目の9月〈週刊セパ記録〉
posted2021/09/01 11:03
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph by
Sankei Shimbun
8月終盤に入って天候が安定し、12球団は順調に試合を消化した。各球団の試合数も100試合前後になっている。
セ・リーグでは4月から首位をキープしていた阪神が、巨人にその座を明け渡し、2位に転落した。しかし勝敗を子細に見ると、かなり特殊な状況であることが分かる。以下、8月31日終了時点の3位までの勝敗である。
1巨人100試51勝37敗12分 率.580 差――
2阪神100試55勝42敗3分 率.567 差0.5
3ヤクルト93試47勝35敗11分 率.566 差1.5
巨人と阪神は0.5差。通常であれば、阪神が勝って巨人が負ければ、順位は逆転し、0.5差で阪神が首位に返り咲くはずだが、実際はそうならない。
1巨人101試51勝38敗12分 率.573 差――
2阪神101試56勝42敗3分 率.571 差-0.5
ゲーム差では阪神が「0.5」で巨人をリードするが、勝率では依然、巨人が1位なのだ。
また、2位の阪神と3位のヤクルトは1ゲーム差だ。通常は、阪神が負けてヤクルトが勝てば勝率で並ぶはずだが、実際は……
2ヤクルト94試48勝36敗11分 率.571
3阪神101試55勝43敗3分 率.561 差0
とヤクルトが勝率で1分も上回ってしまう。
プロ野球のペナントレースの順位は「勝率」で決定する。だから上記のようになるが、一方でゲーム差は勝敗差に基づいて表している。
だからゲーム差ではリードしているのに、勝率ではリードされるという「ねじれ現象」が起こっている。
引き分けが少ない阪神に“1勝分のハンデ”が?
今季のNPBペナントレースは、新型コロナ禍に対応するため9回打ち切りとなり、その時点で同点の場合は引き分けとなっている。昨年は10回打ち切り、一昨年までは12回打ち切りだった。このために引き分け数が激増。8月31日時点では、両リーグ合わせて594試合で75試合が引き分け。実に試合数の12.6%に上っている。昨年が720試合で40試合、5.6%だから倍増以上だ。
12球団の平均引き分け数も昨年の6.7試合から12.5試合に増えている。
12球団のうち阪神を除く11球団はすべて2けた引き分けを記録しているが、阪神は3だけ。ペナントレースでは引き分けは勝敗に関係がないから、阪神は実質的に他球団よりも多い試合数を戦っていることになる。
残りともに43試合の巨人と阪神が、どちらも勝率6割強の26勝17敗でシーズンを終了するとすれば……
巨人143試76勝55敗12分 率.580
阪神143試81勝59敗3分 率.579
となり、巨人が優勝することになるが、勝敗差では阪神の22に対し、巨人21でゲーム差では0.5差で阪神が上回ることになる。
わずか1~2勝のことではあるが、競り合いになってくると阪神は厳しい状況に置かれる可能性がある。引き分けの多寡はチームの努力とはあまり関係がない。「運」の要素が大きいが、阪神は他球団より1勝分ハンデがあることを意識しなければならない。