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若者たちに不人気な「スポーツ観戦」…東京五輪で若年層の視聴率は伸びた? プロ野球中継のメイン視聴者は“75歳以上”説も…
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byGetty Images
posted2021/08/27 17:02
東京五輪で正式種目に追加されたBMXフリースタイル。写真は5位に入賞した中村輪夢(19歳)
「競技自体への熱は高まっておらず、どちらかと言えばSNSコンテンツとしての盛り上がりでしょう。例えば、日本男子バレーボールの代表が『日本チャチャチャ』の振り付けを踊った動画がバズったり、アメリカ7人制ラグビー女子代表のイローナ・マー選手が選手村の食事について動画を投稿するなどしましたが、若いユーザーはなんの競技の選手が投稿しているかはあまり気にしていない。東京五輪は動画ベースのSNS(インスタグラムのストーリーズやTikTok)が普及した時代に初めて開催された五輪でした。アスリートの裏側や身近な姿がSNSのタイムライン上に流れ、そのコンテンツの面白さに若者は関心を示したのです」
とはいえ、SNSのコンテンツに関心を持てば、その選手が出場する試合にも興味が湧くのが当然の流れだ。ソフィヤ氏も、こうした選手自身のSNSが、若年層を競技の視聴へ呼び込んだ可能性を指摘する。
「インターネット利用者のうち9%がアスリートのSNSをフォローしています。特に15~34歳の若年層では男性20%、女性11%の割合でフォローしており、他の年代に比べて2倍ほど高い。弊社の別の調査では『SNSでフォローしているタレントの出演番組を見る』という視聴傾向が報告されていますから、今回の五輪でも同様の作用は働いただろうと考えられます」
SNSのネタ探しのために五輪をチェックし、もしも印象深いアスリートに出会ったらその競技を見る。そんな視聴をしていたのが、若者たちのこの17日間だったのだろう。
現段階で若者の視聴行動は五輪を機に大きく変化したとは言えない。しかし、今大会は動画ベースのSNSが若者を動かした初めての五輪であり、2017年のPwCレポートで懸念された「若い消費者層の行動変化」を如実に示した結果と言える。このような視聴傾向が可視化された点で、スポーツ業界関係者に与えた示唆は大きいだろう。
後半では、そんなSNSを駆使する若者世代はどんな競技を好み、スポーツ関連事業者たちはこれにどう対応しているのかを紹介したい。
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