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若者たちに不人気な「スポーツ観戦」…東京五輪で若年層の視聴率は伸びた? プロ野球中継のメイン視聴者は“75歳以上”説も…
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byGetty Images
posted2021/08/27 17:02
東京五輪で正式種目に追加されたBMXフリースタイル。写真は5位に入賞した中村輪夢(19歳)
「弊社がネット利用者3113人を対象に今年実施した調査では、OTTサービスの中でダントツの人気を誇るのはAmazon Prime Videoで、インターネット利用者の28%が加入しています。次いでNetflix、Hulu、U-NEXTと並び、5位のDAZNの加入率は3%です。ただし、34歳以下の加入率にフォーカスすると、4%となり、中高年よりは比率が高い。若年層のスポーツ関心層は、ネットでのスポーツ視聴にシフトしていると言えるでしょう」
1~4位の上位陣は、昨年および一昨年の同種調査と比較すると加入率を伸ばしている。DAZNもここ3年間で3%前後を推移し、増加傾向にはある。ソフィヤ氏も「DAZNは成長の余地がある状況」と言う。しかし、若年層の加入率がわずかながら高く出てはいるが、若年層ではテレビでもネットでもほとんどスポーツ中継を視聴していないと言うのが正確なところだろう。
東京五輪で13~24歳の視聴者が「1~2割増えた」
今回の東京五輪はこのような若者のスポーツ視聴傾向をどのように変えたのだろうか。鈴木氏は視聴率をもとに次のように分析する。
「五輪開会式の世帯視聴率はスイッチ・メディア・ラボによれば42.5%。これはリオ大会の3倍で昨年末の紅白歌合戦も上回りました。特に13~24歳では15~25%と相当数が見ていました。また、19時~22時の総個人視聴率(4歳以上の個人全体でどのくらいの人がリアルタイムでテレビを見ていたかを示す割合)は、五輪開催中の7月26日~8月1日では40.6%。前年同比で3%上昇しています。中高年は日頃からテレビを見ているので、数字の上昇はテレビ離れしている若年層の視聴が多かったことを示しています」
13歳~49歳の視聴を示す「コア視聴率」も五輪放送開始後に上昇し、特に13~24歳の若年層は五輪期間前よりも1~2割の視聴者が増えたという。このことから五輪は多くの若者をテレビの前に引き寄せたといえよう。しかし、鈴木氏は「五輪と平時のスポーツ中継は完全に別物」と指摘する。
「今回の開会式において50歳以上の多くの視聴者は、冗長だった各国選手団の入場パートで脱落しましたが、13~24歳は数字を上げています。中高年は全体の物語を考えて見ているため退屈してしまいますが、若者はBGMとして使われたゲーム音楽や知らない国名などに反応し、その瞬間を楽しんでいたようです。若者にとって五輪はスポーツよりもお祭りという認識が強いことがうかがえます。
紅白歌合戦が視聴率で他局の音楽特番にダブルスコア以上の差をつけるように、特別な国民的イベントと普段の放送は完全に別物。今回の五輪もこのようなお祭り効果で若年層の視聴率を伸ばしました。またこうした国民的お祭りの際はSNSで盛り上がりやすいから視聴する、という動機も働きます」
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原田氏も「確かにここ数年でいえば五輪は若者の関心が高いイベントだった」とし、今回の五輪に対する若者の本音をこう分析する。