甲子園の風BACK NUMBER
清宮幸太郎の弟・福太郎 “公式戦ホームラン1本”で終わった早実の3年間「自分たちがこんなに弱いとは」「プロは全然…大学しか」
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/14 17:02
西東京大会、早実対福生での清宮福太郎
「プロは全然、考えてないです。大学しか」
ある試合の会見で練習試合を含めた通算ホームランの本数を尋ねられ、「15本くらいです」とそっけなかった。
こちらメディア側も肉声を聴く機会がほんとに少なかった。会見で密を避けるなどの措置で指名することができなかったり、取材時間が短かったりしたからだ。
次男は奔放で活発、という世評が一般的だろうか。だが、あくまで会見での受け答えのものだが、この兄弟は逆の印象がある。長男の幸太郎が天真爛漫で思いついたことをそのまま言葉にしていた。そして笑い顔が多かった。次男の福太郎は落ち着いていて即答せずにじっくりと言葉を探す。そして質問した記者に目を向けて丁寧に答えていた。
最後の試合、今後の進路を尋ねられた。
「プロは全然、考えてないです。大学しか考えてないです」と大学進学予定を表明した。
ボールを触る時間が例年よりも決定的に少なかった
兄とは裏腹に、弟の周辺は今のところ平穏だ。
兄と決定的に違うのは、野球そのものに触れた時間だ。
福太郎はどれだけ高校野球がやれただろうか。
普通だったら、日々3時間ぐらいの練習時間があって、週末にもなれば練習試合が組まれ、年間50試合ぐらいはやっていたはずだ。
それが、緊急事態宣言が発出されれば部活禁止、もちろん対外試合もできていない。野球そのもの、ボールに触る時間が例年の高校球児よりも決定的に少なかったのだ。
それは最後の試合にも如実に結果として出てしまった。先にも書いたようにエラーの連鎖が致命的になってしまったからだ。スクイズされて間に合わない本塁へ悪送球して、失点を重ねるといったシーンが複数回あった。
「(エースの)田和を早い回(3回)からリリーフ登板させたことで、1点もやれない雰囲気を私が作ってしまったかもしれない。1点は受け入れてでも、アウトカウントを増やす場面だった。反撃するチャンスはあったはずで、ゲーム全体を見渡せなかった。でも、お互い様ではあるけれど、今年は試合の経験が少ないので、選手を責められない」
和泉実監督はこう言って選手を思いやった。