甲子園の風BACK NUMBER
清宮幸太郎の弟・福太郎 “公式戦ホームラン1本”で終わった早実の3年間「自分たちがこんなに弱いとは」「プロは全然…大学しか」
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/14 17:02
西東京大会、早実対福生での清宮福太郎
「自分たちがこんなに弱いとは」
「衝撃的。自分たちがこんなに弱いとは思わなかった。おごっていたのかな。これが夏でなくて良かった。それが、一番の救いです」
会見でこう言って、まさに唇をかんだ。
そして迎えた3年の夏。ノーシードから3試合に勝利して国学院久我山戦。久我山には1年夏も、神宮球場でサヨナラホームランを打たれて負けている。
「同じ相手に3回も負けるわけにはいかない、とみんなで言っていました」(清宮主将)
今夏、3度目の対戦を迎えるにあたって、早実ナイン、特に3年生はそう確認し合ったそうだ。だが、久我山の躊躇ないバント攻撃に浮足立った。失策も絡み、4対10と大敗を喫した。
「まあ、そうですね……力負けかなという気がします。振り返るのは難しいですが、力負けかな」
福太郎は会見で敗戦の弁を絞り出した。
3年間で公式戦は19試合、ホームランは1本だけ
最後の夏は4試合だった。戦った公式戦は3年間で合計19試合。ホームランはわずかに1本だった。
右バッターボックスでバットを揺らしてタイミングを取るフォームや雰囲気は、兄に似ていると言われた。体格も似通っているし(身長182センチ、体重96キロ。兄は184センチ、103キロ)、打球の速さも兄譲りで、高校球界では群を抜く。
ただその一方で、幸太郎はあの年、アマチュア球界全体でも稀有な選手だった。取材陣は毎試合、当然のように会見に呼び、ホームラン数を確認したものだし、大きな大会では数台のテレビカメラと数十人の記者が取り囲んで、という取材風景も大げさではない。
3年の8月、高校ジャパンに選ばれ、カナダのU18ワールドカップでは甲子園未出場ながら主将を務めた。進路も注目され、ドラフト会議の1か月前にわざわざ会見を開いてプロ志望を表明した。ドラフトでは7球団が1位指名し、渦中の人だった。
かたや福太郎も幸太郎の弟ということで気になる存在ではあった。だが、コロナ禍もあり、否応なく数字を残す機会そのものが減ってしまった。