甲子園の風BACK NUMBER
清宮幸太郎の弟・福太郎 “公式戦ホームラン1本”で終わった早実の3年間「自分たちがこんなに弱いとは」「プロは全然…大学しか」
text by
清水岳志Takeshi Shimizu
photograph bySankei Shimbun
posted2021/08/14 17:02
西東京大会、早実対福生での清宮福太郎
「自分だけがすごい苦労をしたわけではない」
いつもの年なら、練習試合や走者をつけてのケースバッティングで身について対応もできただろう。今年の3年生は特異な学年なのだ。
「そうですね、コロナ……。自分一人が何か、というよりは、自分の代の3年生全員でコロナを越えようとアイディアを出して短い時間の中で工夫しました。自分だけがすごい苦労をしたわけではない」
福太郎は主将として、仲間とともに苦心してここまでたどり着いたことに感謝した。和泉監督も特別にエールを送りたい学年だという。最後の言葉に福太郎の2年半が凝縮されていた。
「高校野球って、勝った負けたとか、練習をやり込んでいっての過程とかが一番、大事。それを自分の糧にするものなんですけど、それができなかった子たちですよね。先輩たちがやってきたものとは違う高校野球を2年間やった。結果を受け入れなきゃいけないことは高校生にしたら大変な作業だったと思うんです。今までの生徒の中で一番、頑張ってほしいなと思う3年生です。いろんな世界で成長していってくれる子たちだと信じています。お前ら、ここからだよ、って」
マスクの上に覗いた指揮官の眼は潤んでいるように見えた。
存在そのものが稀有だった兄と、特異の年の中で敗れた弟。2人で“幸福”にあやかった名前、と聞く。現ラグビー協会副会長の父親、克幸氏はラグビー界の重鎮。兄弟も小さい頃はラグビーとの“二刀流”だったが、親元は離れた。ここまで同じレールを歩んできて兄は今、プロの一軍に定着できていない。大学に行くとなると道を違えることになる弟。「続ける」と明言した野球人生にはどんな苦楽が待っているのか。
とにもかくにも、清宮兄弟の高校野球が終わった。
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