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なぜ将棋? レッズ小泉佳穂が影響を受けた羽生善治の“直感力” 自宅では毎日1時間「まだ強くなれる」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byL:Naoki Morita/AFLO SPORT R:Keiji Ishikawa
posted2021/08/13 11:02
リスクを恐れない“一手の選択”など、羽生善治(右)の考えに影響を受けていると話す浦和レッズMF小泉佳穂
将棋を参考にするようになったのは、盤上の戦いにハマった青山学院大3年生の頃。何とはなしにニコニコ動画で対局を見ていると、運の要素がほとんど介在しない世界にぐいぐい引き込まれた。
素人でも解説者の話を聞けば、十分に楽しめた。深浦康市、藤井猛、木村一基の解説は特にお気に入り。想像よりはるか先の手を読んでいることに驚き、棋士の魅力をうまく伝えてくれることにも感銘を受けた。
さらにのめり込むきっかけとなったのは、2018年3月の佐藤天彦名人への挑戦権を争う第76期将棋名人戦・A級順位戦。史上初となる6人のプレーオフはどれも目が離せず、怒涛の展開にしびれた。
「観戦するのが面白くて、面白くて。AI評価値があり、初心者でも形勢判断できたことも入っていきやすかった。見ていくうちにサッカーにも通じる部分があるな、と思いました。1つは試合中のメンタルコントロール。棋士はどのような局面でも、対局で勝っても負けても、感情を表に出す人はほとんどいません。精神状態は盤面に反映されますから。ピッチの上でも全く同じです。心が揺れれば、プレーに影響を及ぼします。僕はミスにとらわれるタイプなので、まだまだ未熟。試合中はすぐに次に目を向けるメンタリティーを持たないといけません。最近は意識しているので、少しずつ改善されつつありますけどね」
いかに数的優位をつくるか
将棋の深みを知っていけばいくほど、サッカーの戦術と意外な共通点があることにも気づいた。局面で人数(駒)が多いほうが勝ちに近づく。いかに数的優位をつくるかが重要になってくる。
「質、配置、個の能力も考えないといけません。個の能力は、将棋でいえば、駒の強さ。細かくポイントを稼ぎ、優勢に持っていきます。特に僕はフィジカル能力に長けたタイプではないので、将棋からもサッカー選手として生きていくヒントをもらいました」