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なぜ将棋? レッズ小泉佳穂が影響を受けた羽生善治の“直感力” 自宅では毎日1時間「まだ強くなれる」
text by
杉園昌之Masayuki Sugizono
photograph byL:Naoki Morita/AFLO SPORT R:Keiji Ishikawa
posted2021/08/13 11:02
リスクを恐れない“一手の選択”など、羽生善治(右)の考えに影響を受けていると話す浦和レッズMF小泉佳穂
人気オンラインゲーム『将棋ウォーズ』で1級の棋力を持つ小泉が、好んで使う戦法は振り飛車。ただし、相手の出方によっては居飛車で戦うこともある。自分の型を頑固に貫き通すタイプではない。相手によって柔軟に対応するのは、サッカーでも変わらない。
「弱者には弱者の戦い方があるので」。己をしっかり分析しているからこそ、不利な状況に持ち込まれる前に対処することを心掛けている。最も神経を尖らせるのは終盤。序盤、中盤で優位を保っていても、詰むチャンスを逃せば、負けるリスクが一気に高まる。
「サッカーと似ていますね。ボールを保持し、ゲームを支配していても、ビッグチャンスを一度逃せば、相手に流れがいくことがあります。最後を崩すのが一番難しい。決めるところで決めないと負けます。将棋には『詰むや詰まざるや』という言葉があり、最終局面は最もエキサイティングで時に残酷。一気に形勢がひっくり返ることもあるので、ドラマも生まれます。そこにカタルシスを感じます」
自宅では毎日1時間
将棋熱はとどまるところを知らない。ピッチでは金髪をなびかせて派手なプレーを見せるが、自宅ではおとなしく毎日1時間、将棋を指すのが日課。実戦だけではなく、詰将棋(5手詰め)でも棋力を磨く。それでも、最近は伸び悩んでおり、パソコンにソフトを入れて、自分の手を見直すことを検討中だ。
「まだ強くなれる。伸びしろはあると思っています。僕くらいの中級者は、人に直接教わるほうが吸収も早いと思いますが、この時勢ですから……。もしも教わることができるのならば、藤森哲也先生、戸辺誠先生にお願いしたい。動画の解説がすごく分かりやすいんですよ。でも、いまは自らの課題を自らで明確にして、改善していこうと思います。これまでサッカーでやってきた作業と同様です」
面白おかしく話すような口ぶりではない。どこまでも真剣である。プロのトップ戦線で活躍する棋士には敬意を抱く。同じ勝負の世界で生きる身として、プロとしてのあるべき姿を学ぶことも少なくないのだ。